1-2:キャラクタークリエイト

現実世界の自分と全く同じ姿をした相手が気さくに話しかけてくるという恐怖体験によって面食らってしまった青葉だったが、すぐにゲーム内だということを思い出して目の前の自分に話しかけた。


「なぁ、何でアタシのカッコしてんだよ?ファンにでもなったのか?」


“名前を教えてください”という言葉を軽く無視して不満を自分の姿をした相手にぶつける。


「いえいえ、今のあなたをベースにこれからのあなたの体を作っていくのでこれは謂わばマネキンのようなものだと思っていただければ。」


そう言ってくるくるとその場で回ってみたり、ピースしたり、おどって見せる自分に苛立ちを募らせる。


「……じゃあお前を着飾っていけばいいのか?」


「服装から決めましょうか、お手元の資料をご覧ください?」


そう言って見せられたウィンドウには様々なタイプの服がカタログのように並んでいた。

試しに黒いドレスを選んでみれば、目の前の自分がその服に一瞬で着替えていた。


「あぁ、こういう感じね。」


ポチポチとカタログを操作していく青葉は最終的にノースリーブのセーターとデニム生地がしっかりと己を主張するスキニーパンツ、そして少し太めの革ベルトに底がしっかりとしたブーツの4つを選んだ。


「では色を設定しましょう。」


それぞれのパーツを薄いグリーン、グレー、明るめのブラウン、黒へと色を変えていく。


「ファッション小物は付けますか?」


「いや、どうせすぐ防具は更新するだろ?そんなに手の込んだことはしねぇよ。」


「一度姿を決めてしまうと3か月に一度しか姿の変更はできませんがよろしいですか?」


「あぁ、別に見た目にそこまでこだわりもないしな。」


青葉は“動きやすそう”という理由と“カタログの最初の方にあったから”という理由でこの服装を選んだ。

故に“姿の変更”という独特な言い回しに疑問を持たなかった。


「後はこのぼさぼさの髪を梳かして後ろで縛って……こんなもんだろ。」


「この深い隈はいかがしますか?」


「……消しといてくれ。」


出来上がった姿に満足した青葉はさっさと次に行けともう一人の自分にまくしたてる。


「では次に武器とステータスの設定を行います。お手元の資料をご覧ください。」


今度のカタログには“近接武器”、“遠隔武器”などのアイコンが並んでいる。

青葉はほぼほぼノータイムで何の変哲もない棒を選んでいた。


「あぁ、これがステータスか。」


棒(杖)を選んだことでステータスの設定画面が現れた。


「ステータスポイントは初期値として200与えられています。」


画面を一瞥した青葉はVITと書かれたところにすべてのポイントを振り切ったのだった。


「AGIに振れないならVITしかいらねぇだろ。」


「本当にこれでよろしいですか?」


「色々歩き回るのに杖があれば楽だし、足の速さが変わらねぇならVITに全部振れば早々死なねぇだろ?」


「ステータスや武器の変更は今後一切行えませんがよろしいですね?」


「あぁ、これで大体終わりか?」


「最後にキャラネームを決定してください。」


「“グリーン”。これでいいか?」


青葉だからグリーン。安直な名づけだがまあいいだろうと青葉はさっさとその先を促す。


「では、あなたの新しい人生に幸多からん事を願います。」


ここへとやってきたときと同様に意識が薄らいでいく。

これまでのことが夢だったかのように。

これからのことが夢であるかのように。

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