-0.5gの毒-

-…次の日の朝


うぅーんと背伸びをしてカーテンを開けた。

驚くほど天気がいい。


制服に着替えクッキー2袋をカバンに入れステップを踏むように階段を降りていった。


「あら?おはよう!ご機嫌ね?」


「そう?」


ダイニングテーブルに見知らぬ男が座って新聞を読んでいる、多分、花音の父親か…じっと俺の方を見ている。


「あ…あの…」


男は立ちあがりこちらに向かって目の前に立つ。

こ…怖い。


「花音」


「は……はい」


「パパを忘れちゃったんでしゅかー?!」


そう言いながらギューッと抱きしめられた。


「!?…ぐえっ」


「パパ!花音は病み上がりなのよ!もう!辞めてちょうだい!」


母親が、必死に俺から父親を離す。

こ……怖かった……なんなんだ、この父親!!

母親にキツく叱られていて初対面で見た姿とは全く違う。


「花音!朝ごはん食べて!学校遅れちゃうわよ!」


テーブルに置かれた牛乳だけを飲み干して『行ってきます!』と家を出た。

電車が来る間、色々考えた。

花音は父親にも母親にも愛されて育っていたんだな。

息を吹き返せばせば、そりゃ泣くほど嬉しいに決まってる。俺は…愛されていたんだろうかなんて…


電車に乗り窓から流れる景色をただ、ぼーっと見ていた。


「おはよー」

「おはよう」


教室に着くと皆が挨拶してくれる。

俺の時なんて返事すらしなかったぞ…。


「おはよっ♡成田さん♡」


「おはよう、宇佐美さん」


「これ♡昨日言ってたクッキー」


「わぁ、ありがとう!私も作ってきたの」


色で分け宇佐美用の小袋を手渡し、他の子にもわざとらしくないように"よかったら皆でどうぞ"と近くにいた男子に渡した。


「やったー!俺のー!」

「ちょっと皆で!って言ったでしょ?!」


皆で俺のクッキーを取り合っているところに宇佐美の渡したクッキーのリボンを開ける。

まるで芸がない、俺にくれたのと同じラッピング。


「成田さんのクッキーめちゃ美味しい!抹茶?」


他の女子から褒められて宇佐美の顔が、歪んだのがわかった。


「あ!宇佐美さんのクッキーも皆で食べましょう!いいわよね?宇佐美さん」


「……」


「宇佐美さん?」


周りのみんなも宇佐美を見て不思議そうな顔をしている。きっと、こんな展開になるなんて思ってもいなかったんだろう。俺は、わかってる2回目だから。


「宇佐美が作ったクッキーもらったぁぁぁ!」


「あ!」


宇佐美のクッキーは、案の定チョコレートでそれを食べた男子をゆっくり見ていた。確か…名前は、江崎。


「……」


「……?うまいけど?」


もしかして、何も仕掛けなかったのか…。

しかし、江崎の反応とは別に宇佐美は、真っ青な顔をしていた。


「宇佐美も成田さんもクッキー作るの上手いんだなぁ」


「え?あたしもちょうだいよ!」

「あたしも!」


自分の手元から宇佐美のクッキーが無くなっていく。

俺の作った皆用のクッキーも、すぐになくなった。

食べたのは、田中と近田。


しばらくして杉田が、教室に来た。


HRが始まってしばらくすると


-ガタンッ


大きな音が後ろから聞こえた。


-ガタンッ


「ん?どうしたー?江崎?田中」


振り返ると二人が、椅子から崩れ落ち床に伏している。



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