-復讐開始の合図-

やっぱりだ…自分より目立つ人間は許さない。

思った通りの人間だな宇佐美。

通りすがりに机から足を出し俺を転ばせようとするのが、わかった。


-ギュッ!

上から思いっきり踏みつけてやった。


「痛っ!!」


「あ!ごめんなさい…足踏んじゃって…」


しょうもないガキだ…バレバレなんだよ。お前がする事は。


「どーしたー?宇佐美」


杉田が、声をかけるも自分が悪いのがわかっているのかなんでもないと答えた。


「足が長いんだから気をつけないと(笑)」


ボソッと宇佐見にだけ聴こえるように呟いてみる。

ダンッと机を叩き恨めしそうに俺を見ながら目には涙をうっすら浮かべている。その姿にただただ笑えた。


授業が、終わり他の生徒達が、俺興味を持って近づいてくる。


「成田さんは、趣味とか何?」

「前の学校は、近いの?」

「気になる男の子見つかるといいねー」

「俺とかどう?」

「やっだー!池内が相手にされるわけないじゃん!」


どうでもいい質問を波が押し寄せるように聞けるんだろうか…


「えっと…趣味はお菓子作りで…前の学校は少し遠いです…」


「え?お菓子作り得意なの?宇佐美と同じじゃね?」


そう、わかっていたから答えたんだ。

さぁ、宇佐美はなんて返すだろうか…


「へー…お菓子得意なんだー♡じゃあさ、今度作ってくるから成田さんもちょうだいよ、交換♡」


「え?いいんですか?そんな…宇佐美さんの手作りなんて嬉しい」


「いいよーいいよー!クッキーとか好き?作ってくるねー」


「じゃあ私も」


我ながらこのキャラは疲れる。

まぁ、毒入りクッキーとわかっているから食べはしないけどお前には、クッキーで復讐する事にするよ。


生徒の立場になると授業ってのは、なかなか疲れるな。眠いし…。


「成田さん問いAの答えは?」


「はい」

問題は…α+βα+β の値を求めよ。


解と係数の関係より,α+β=1α+β=1 となる。

方程式を書き答えも書いた。


「どうですか?先生」


「…素晴らしいわ!あなたすごいのね」


そこで浅田を見る。

少し苦笑いをするように…目が合うとふっと逸らしシャープペンを握りしめていた。周りの生徒は、小さく拍手をしていた。


進学クラスなら解けるだろ…

こんな問題が分からないなら進学クラスやめろ。

誰にも分からないように鼻で笑った。


どんどん授業は、進みあっという間に放課後だ。

俺は、体育倉庫の方へどれにもバレないように歩いて行った。もしかしたら、また何かを企んでいるかもしれない。

体育倉庫の窓がある細い茂みの中をかがみながらゆっくり足音を立てないように進んでいく。ツツジの上木が外からの姿を隠してくれる。


ちょうど窓の下に来た。ここはカギがいつも掛かっていない。


「開けても……平気か……」


少しだけ隙間を作って中の声が聞こえるようにした。

……静かで声はしない。

今日は、なんの作戦も立てないのか…?

…と思うとバァンッと扉が悪音が聞こえた。








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