-花音-

「花音...ちょっといいかしら?」


遠慮しながら部屋へ入ると俺の前で正座をして座った。なにか言いづらそうにしてるのは、きっと自殺をしてしまった娘へどんな言葉をかければいいのかわからないんだろう。


「ママ...私転校したいの...もうあの学校は行きたくない」


こっちから言い出せば母親もきっとワガママと思わず聞いてくれるはず...


「良かったわ。花音がちゃんと自分の気持ち話してくれて」


「心配かけてごめんなさい...あの学校へは二度と行きたくないの...行くなら桜ヶ丘高校に行きたい」


そう、あそこへ行けば復讐が出来る...。

進学クラスはひとつしかない。


「そうね...パパにも話しておくわ。転校出来るか聞いてみるわね、ピアニストになりたいって言ってたけれど音楽コースでいいのかしら?」


それはだめ!音楽の才能なんて俺には、一欠けらも無い。


「あー...えーと...私は、大学は法学部に行きたいの!だから進学コースに入りたい」


「法学部?!花音...あなたなに目指してるの?」


えー...とりあえず進学コースに行きたいって伝えたかっただけで法学部は口から出まかせで...えーと...


「弁護士とか...検事とか...?」


嘘ついてごめんなさい。復讐がしたいから行きたいですなんて言えるわけもない。

ただ、今はあの高校へ入って復讐をしたい。


「..わかったわ。問い合わせしてみるわね」


「ありがとう」


「花音様ー!紅茶入れましたよー!」


太田さんが、タイミングよく空気を一変してくれた。

アッサム?とかいう茶葉は知らないけど甘くて心が癒された。


しかし今日の夜から計画を立ててアイツらをめちゃくちゃにしてやる。しかも、この家はお金持ちでなにかと融通がききそうだ。

今は美味しい紅茶を飲みながらゆっくりと癒されることにしよう。


しかも俺の記憶は、残ってるから勉強はできるに決まってる。杉田 麻生 宇佐美 間宮 浅田...。

他にもいるはずだ。

きっちりお返しはさせてもらう。


「どうしたんですか?花音様」


「え?」


「ボーっとして...もしかしてまだ体調優れないですか?ごめんなさい!ベッドも綺麗にしてるのでゆっくり休んでください!」


「大丈夫...ちょっと考え事してただけ」


そうですか...と太田さんは、部屋から出ていった。

今更気づいたが、俺はどんな顔をして背格好をしているのかはっきりと見てなかった...。

全身鏡があり恐る恐る目の前に立ってみる。


「は?」


前髪は、鼻にかかるくらい長くそれをセンター分けしている。肌も綺麗でよく見ると鼻は高く目も大きくて世間で言う美人な顔をしているのに...勿体ない。

男の俺が言うとセクハラ発言!とか言われそうだけど身長もそれなりに高く細い。

蹴ったら折れそうなぐらい華奢で色も白く髪も真っ黒だ。


俺は、ダダダッと走り太田さんを呼ぶ。

慌てて来た太田さんに色々とお願いしてみた。


「きゃー!花音!可愛いわよー!」


器用な太田さんは美容師免許まで持っており前髪は今どきの長さに切ってくれて伸びすぎた髪もちょうどいい感じにしてくれた。俺は男だからあんまりわからないけど多分、いい感じなんだろう。




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