-花音と俺-

「ちょっとだけ知ってる人...待ってて」


「花音!」


実家の前に立つと震えが来てしまう。あれだけ迷惑をかけてこんなにひどいラクガキまでされて...申し訳なさでいっぱいになる。

インターホンをゆっくりと押した。


「はい?どちら様?」


母親の声が聞こえた。

久しぶりに聞く母親の声だ...泣きそうになるのを我慢してドアが、開くのを待つ。


「えーと...どちら様かしら?もしかして逸希の?」


「あ...はい...あの...」


「逸希に会いに来てくれたの?ありがとねぇ...でも、今はまだ現実が受け入れられなくてね...また今度にしてもらえるかしら?ごめんなさいねぇ」


バタンッとドアが閉まった。そうか...俺は、ちゃんと死んだのか。母さんは、まだ現実を受け入れられない...そうか、そりゃそうだよな。兄貴も親父にも迷惑かけて...。


「花音!どなたのお宅なの?もう車に乗って!帰りますよ!」


腕を引っ張られ車に乗せられた。

俺は、死んでいて今は女子高生になってここにいる。


「誰なの?花音の知ってる人?」


「うん、学校でお世話になってた人...」


「やだ!早く言いなさい!ママもお礼言ったのに!」


「大丈夫」


そう言いながら見る空はもう夕方になっていてオレンジ色に染っていた。


「ここが家よ?それはわかるわよね?さすがに(笑)」


大きな一軒家で入口より奥に家が建っていて庭は、ものすごく広い。この子はお嬢さまなんだ...。


「おかえりなさいませ!花音様!良かったー!本当に良かった」


そう言い泣きながら1人の女性が、抱きついてきた。


「太田!花音はまだ本調子じゃないのよ!まだ少し学校は休むからお世話お願いね!」


「はい!お任せ下さい!」


もしかしてだけど...この人はハウスキーパーとかいう人?広すぎるリビングに大きなイタリア製のソファ。

壁には絵画が、飾られてある。


「花音、お部屋でゆっくりしなさいね?パパも明日には海外から戻るから」


海外...俺なんて生まれて一度も行ったことないわ。


「あの...部屋ってどこだった...かしら?」


「もう!忘れたんですか(笑)ご案内しますよ!変な花音様!」


屋敷が、広いし部屋は沢山あるし勘でどうにか行けるような感じでは無い。太田という人について行くと真っ白の扉を案内してくれた。


「花音様の部屋はここですよ!(笑)」


開けられてさらに驚いた俺の住んでたアパートの3倍はあるぞ...これ。


「あ、ありがとうございます...」


「そんな他人みたいな挨拶はやめて下さいよ!いつもみたいに太田ー!って呼んでください!あとで紅茶持ってきますね?アッサムのミルクティーでいいですか?」


「あ...は...うん」


真っ白の家具で調教された部屋。

ベッドにはカーテンみたいなのがついていてソファも1人には十分すぎる大きさで奥には白いピアノまである。


「俺とは大違いの生活してたんだなぁ...」


その時、コンコンとノックされ返事を返すと母親が、顔をのぞかせてきた。


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