-地獄の始まり-

黙々と押し付けられた書類を片付け昼休みになって売店へと向かう。ひそひそと聞こえる声が、全て俺への言葉と思ってしまうほど精神的に参ってしまっているのがわかる。


「その焼きそばパンと牛乳を...」


売店のおばちゃんは、俺を見て目を丸くしチッと舌打ちをした。


「330円!」


投げるように商品を置かれじっと見ている。

財布から500円を出しお釣りも投げるように渡された。


「売店のおばちゃんにも嫌われてんの草」

「ロリコン!早くそこどけよ」


後ろの生徒が軽く俺を蹴る。

通りすがりにきっしょと言われながら俯いて職員室に戻ると杉田先生が、デスクの前で待っていた。


「佐倉先生!無罪だったんですね!良かった!あの時は、申し訳なかった!担任は俺に任せてください!良い生徒達ばかりでやりやすいですよ!」


.....正気か?毒入りクッキーを渡してきたり缶コーヒーに薬混ぜたりするのがいい生徒か?

その言葉をグッと飲み込みそうですかと返事をする。


「まだ今は周りの目がしんどいかも知れませんけど俺は、佐倉先生の味方ですから!」


「え...?ほんとですか?」


「もちろんです!」


泣いてしまいそうだった。俺の無実を信じてくれる先生がいただけでこんなに心が救われた。


「ありがとうございます」


「書類も手伝えるなら言ってください!」


「はい!」


買ってきた食事をさっさと済ませ書類を片付け始めた。なんとなくほんの少しだけ心が澄んだ。

味方の先生がいるだけで落ち込んでた気持ちが救われるとは...。


-...それから5ヶ月...杉田先生の存在もあって耐えて耐えて雑用係を何とかこなしてきた。

これも修行だと自分に言い聞かせ耐えてきた。

周りの先生も返事や挨拶はしてくれないものの、俺への冷たい当たりはマシになっていた。


「佐倉先生、もうすぐ体育祭なんで書類見て体育感の道具とか確認しといて貰えます?」


「わかりました」


「体育祭の書類...これだ」


杉田先生に一緒に確認してもらおうか...その方が手っ取り早い。書類を手に体育倉庫へ向かった。


扉が開いている。中に先生がいるのかもしれないと入っていくと声が聞こえた。誰か体育倉庫の中でサボっているのかとそーっと覗き込んだ。そこには、杉田先生と...渡辺...麻生...宇佐美...姿は見えないが数人の生徒がいる。


「てかさー!杉田先生の作戦甘かったんじゃない?」


「そんな事言うなよ!缶コーヒー処理し忘れたのは渡辺だろ?」


「いやいや、待って。あの時ホテルでいたの先生じゃん!缶コーヒーの存在忘れてたんだから一緒でしょ」


「ホントだよ!ちゃんと処理してればあいつ逮捕されてたのにさー!また戻ってきたじゃん!」


「...杉田先生もひどいよねー(笑)嫌いだからってあそこまでやるんだもんねー」


「先生は、ああいう誰にでもいい顔して自分一人で頑張ってますって奴がいちばん嫌いなの」


「だからってそこまでやる?普通?ギャハハ」


血の気が引いた。これは、現実なのか?

まさか杉田先生が、俺を陥れる為にあんな事やったのか?足の力が抜け書類を落としてしまった。


「ん?誰かいるの?」


しまったと思った時には遅かった...杉田先生が、ニヤッとしながらこっちに近づいてくる。


「ありゃー!佐倉先生!聞いてました?もしかして」


他の生徒も顔をのぞかせてニヤニヤしながら俺を見ていた。


「.....全部、杉田先生の仕業だったんですか?」


「そうですよ?なにか?俺はねー...先生がいなくなればいいのになぁーってずっと考えてたんですよ。」


「なぜ...ですか?」


「嫌いだからですよ」


それだけの理由で俺の両親まで巻き込んであんなことを...。怒りでどうにかなってしまいそうなのを耐えグッと掌に力を込め握りしめた。

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