-地獄の始まり-
両親へ電話をかけた。きっと迷惑しかかけていないとわかっていても母の声が聞きたかった。
「もしもし佐倉です。」
「か...母さん...あの...俺だけど」
「逸希!あんた何て事したの?!うちにマスコミが押し寄せて今、大変なんだよ!父さんも仕事に行けないくらいおおごとになってて!寝込んじゃったわよ!...なんで...なんで生徒さんなんかに...うっ...」
やっぱり、俺の実家まで特定されてるんだ。
無罪なのになんで...こんなひどい仕打ちを...。
「母さん!俺は無実だよ!警察が調べてくれて無実だったって証明されたんだよ!だから...俺は「そんなのいまさら、言ったってあんたがやってないってどうやって証明するの?!こんなにたくさんの人に何もかもバレて母さん達ここにもう暮らせないよ!どうしてくれるの?!」
そうだ...SNSでの拡散なんて悪いことばかりが目立っていて真実は、拡散なんてされない。
「もう電話かけてこないでちょーだい!!」
ガチャンッと思いっきり電話を叩きつけるように切られた。見たくはなかったがどれほど拡散されているのかトリッターを開く。
「〇〇高校の教師が女子生徒を強姦!警察に捕まった時の写真あり!」
その拡散は2万を超えていた、リプ欄にはたくさんの俺への誹謗中傷が書かれている。
「最低...さっさと学校辞めろ!」
「ロリコンは死ね」
「見た目普通の先生じゃん?こういう奴がいちばん危ない」
「きっしょ!早く免許剥奪しろや」
胸の傷をえぐる言葉が、並んでいる。ここに俺が書き込んでも火に油を注ぐだけだ。
涙が溢れてくる。生徒の相談に乗っただけなのにどうして...。
-...それから3週間後
学校から連絡があり戻れることになった。
それまで俺は、書き込まれる誹謗中傷をひたすら読み悔しさと虚しさでどうやって過ごしていたかわからなかった。
久しぶりの学校...。
門をくぐると通りすがりの生徒が、俺を見て驚いている。
「ロリコン教師」
「良く来れるな...さっさとやめろよ」
そんな目で俺を見ているのがわかる。
ほかの生徒はスマホを俺に向けたりしながらクスクスと笑っている。
「おはようございます...」
職員室を開けるとそれまで聞こえていた音が、しんと消えた。誰も挨拶など返してくれない。
「あ!佐倉先生!あなたのクラスの担任になったのは杉田先生です。あとでお礼を言っといてくださいね。今は、まだ落ち着かないと思いますから雑用だけお願いしますね」
教頭先生は、なんとも言えない笑顔を向けてそそくさと自分のデスクに戻った。俺が何をしたんだよ...。
無実だって証明されたのに担任まで外されたのか...。
「わかりました...お手数お掛けして申し訳ありません」
デスクの上には大量の資料や書類が置かれている。
静かに座りそれを1つずつ目を通しながら片付けていた。
「佐倉先生!これもお願いしますね!」
間宮先生がファイルに閉じられた分厚い書類をドンッと置いた。
「あ...はい」
「期限は明後日なんで早めに片付けてくださいね!」
明後日に片付くような書類ではないことくらい見ればわかった。俺をきつく睨みながらため息をついている。
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