-排除対象-
しばらくして警察が入ってきた。
呆然とそれを見ている俺に警察官は立てと両腕を掴んで立たせた。
「お疲れ様です。よろしくお願いします」
教頭先生が、深々と頭を下げると頷いて2人がかりで俺をパトカーに載せる。連れて行かれている俺を通りすがりの生徒が、スマホを向けて笑っていた。
「で?あんたほんとにやったの?証拠もこれだけ出てるからやってないと逃げられないぞ」
警察署に着くと取調室に入れられ目の前には強面の刑事が、その脇の方でパソコンと向かい合う刑事がいた。
「違います...」
「あ?なんて?声をもっと大きくしてくれるか?聞こえない」
「ホントに俺はやってません」
「じゃあ、なんであんたのスマホにこんな写真が残ってんだよ!」
ドンッとスマホを机に投げつけられた。
「それは...それは渡辺が、ストーカーに嫌がらせをされるから相談に乗って欲しいと言われて.....」
そうだ!あのコーヒーを飲んでからの記憶が無い。
その事を説明しても「証拠は?」と言われ缶コーヒーをどこに置いたのか...
「車です!缶コーヒーになにか薬を混ぜられてるのでそれが証拠です!調べてください!そうだ...あの後記憶がなくなって...」
パソコンに向かう刑事に顎で合図をしてはぁぁと大きなため息をついた。あの缶コーヒーさえあれば...冤罪だと証明出来る。
それから俺は3日間、留置所で過ごした。
親にも連絡がいったんだろうか...もし冤罪だったとしても生徒達が、スマホで俺を撮っていた。きっとSNSで拡散されてるに違いない。
「佐倉、出ろ」
取調べをしていた刑事が、機嫌悪そうに鉄格子の前に立っていた。
「え...じゃぁ...もしかして缶コーヒーが?」
「あぁ、見つかった。中には最近流行りのドラッグが混入されていた。とりあえずは、帰っていい」
ろくに眠れず不安と恐怖でいっぱいいっぱいだった体が、限界を迎えていた。
「あぁ、それとお前が無罪だったとしてもSNSで本名、住所、全部晒されてるらしいぞ」
「え?」
「学校にも教師にも戻れないかもなぁ...次は誤解されるような事するんじゃねぇぞ」
空いた口が塞がらなかった。
どうして無実の俺がそんな仕打ちを受けなければいけないのか...。
フラフラと警察署を出て久しぶりの太陽の光に目を細めた。返された携帯には何件もの着信が、入っていた。もちろん、両親からも。
かけ直す気力なんてない...しかし、学校からの履歴には出なければとかけることにした。
「はい、桜丘高等学校の間宮がお伺い致します」
「あの...佐倉ですが...」
「あぁ...お待ちくださいね」
声のトーンが下がったのがわかった。
「校長先生!佐倉先生からです」
ガサゴソと雑音が入り「もしもし」と校長先生の声が聞こえた。
「佐倉先生ねー、無罪の証拠が出たらしいんですが騒ぎが収まるまではしばらく休んでください。こちらもマスコミ対応などで忙しいんですよ、また追ってこちらから電話しますんで」
「え?無罪なのになぜマスコミが...」
「そりゃ、あんた考えても見てくださいよ!トリッターとかなんとか言うSNSで拡散?ていうんですか?もうそりゃ騒ぎになって他の生徒の親御さんからも電話は鳴りっぱなしで...こちらは対応に困ってるんですから!では!忙しいので!また!」
電話が切られた。
拡散...そういえば刑事さんも言ってたな...親の所にまでマスコミは押し寄せていないだろうか...。
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