-悪気のない悪意-
帰りのHRが終わり1日がやっと終わった...。
担任になって3日。先が思いやられるなぁと職員室で落ち込んでいると体育教師の杉田先生が、声をかけてきた。
「大変でしたね」
「ええ...本当に...」
はぁぁぁと大きなため息をつくと杉田先生は笑った。
「先が思いやられますよ...まだまだ一学期は続くんですよ...杉田先生は担任になって長いですけど問題とかどうしてたんですか?」
「いやー...関わりを持たないことですねー。何考えてるかわからないから教師と生徒と一線を確実に引いて話も極力しません。」
極端だなと思ったがそれが1番いい解決法かもしれない。俺の気持ちの緩みがこんな事を引き起こしたのかもしれない。
「じゃ!僕は部活あるのでお先に!」
「お疲れ様でした」
明日から思いやられるが杉田先生のアドバイスを実践してみよう。
-クッキー時間から3週間。
極力生徒達とは一線を引き話もまともにせず物をもらうなんてもちろんなく普通の一日を過ごすことが出来ている。
「授業終わります。」
素早く教科書などを片付け教室から出ようとした時
「先生...あの...」
「な...なに?」
渡辺から声をかけてくるなんて珍しいな...と少し身構えながらゆっくり後ずさりする。
「そ...相談が...あるんですけど」
「そ...相談...?ここで話せる事?」
キョロキョロと周りを見渡すとフルフルと頭を振った。なにか怯えているのか体が震えているような気がした。相談事ならちゃんと聞いた方がいいんだけど宇佐美のこともあるからなぁ...と悩んだが...
「わかった、じゃあ放課後に聞くから職員室に来てくれるか?」
「わかりました...」
渡辺は比較的、目立たない生徒だ。他の生徒達が騒いでいる中休み時間も本を読んでいるようなタイプ。
なにか個人的な悩みがあるんだろうか...。
そして放課後-...
「先生...」
「来たか...悩み事だって?なにかあったのか?」
「ここじゃ話しにくいんです...」
それならと生徒指導室に行くと渡辺は俺と2人きりなのにキョロキョロと辺りを見ている。
「どうし「ストーカーされてるんです」
俺の声を遮って彼女は涙目で話した。ストーカー?!
落ち着くように諭すと相談を順に話してもらった。
彼女の話だと1週間前から靴箱にラブレターのようなものが入っていたらしい。しかし、告白というよりは脅迫に近いと言う。
『他の男と話してたね。殺す』
『今日も他の男と話していたね?僕を見てくれないのかな?殺すよ』
そんな手紙がずっと続いているらしい。警察に届けてはどうか?という俺の提案に大事にしたくない。報復が怖い。親にバレたら面倒だと言う。うーん...と首を傾げる俺に彼女は何も言わずにただ泣いている。
「殺すとは穏やかじゃないな...思い当たる人間はいないのか?」
「いません...クラスの男子と話はするけど進学クラス以外の子と話すこともしません」
...ということは犯人はクラスにいる男子?
渡辺に好意を寄せていそうな男子...大人しい彼女だからこそ攻撃的な文章で萎縮させているんだろう。
「その手紙は持ってるか?」
「す...すぐに破り捨ててます...」
そりゃそうか...そんな怖い手紙なんて置いておきたくないよなぁ...。
「次、もしまた靴箱に入っていたら先生のところに持ってきてくれるか?」
「わ...わかりました...」
彼女がここまで怖がっているんだから家まで送るのが妥当だろうか...。でも、毎日のこととなって変な噂を立てられたりしないだろうか...。
「1人で帰れるか?」
「は...はい...ありがとうございます」
大きくお辞儀をして彼女は、出て行った。
-...その頃
ドンッ!と重い音がした。
「キャハハ!痛っそー!」
壁に思いっきり押し付けられたのは、宇佐美。
「ねーぇ?なに失敗してんの?クッキー全部に除草剤入れろよ。あたしがやらなくちゃいけなくなったじゃん?その場であの雑魚教師に食わせてれば...はぁ...ねぇ!!!!!」
「ごめんなさい...ごめんなさい」
地面に額を擦りながら謝っていた。
「ウッ!!!!...ゲホッゲホッ」
横から思い切り蹴られ更に体を丸めて痛みを抱えていた。
「お前が!失敗しなきゃ!今までの担任と!同じように!排除出来たんだよ!!!!」
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