第68話 エイジアン・コンクエスト
068 エイジアン・コンクエスト
1585年(天正13年)
金鵄島(豪州大陸)周遊にでていた九鬼艦隊がポートダーウィンに戻った。
各地の縄張りなどを行いながら周遊したため、2年もの時が過ぎた。
この期間中も各地で要塞建設が行われ、太平洋の島々の発見と占領が行われていた。
ニューギニア島にも、要塞が作られていた。
艦隊司令部はマニラに置かれ、新型戦艦5隻が就航した。
共通語は日本語とされているが、船員、兵士は現地人がほとんどになりつつある。
現地兵には、刀と槍が支給されているが、反乱する可能性も考えられるので銃は与えられていない。そして彼らを統率する仕官が倭人である。
たびたび、イスパニアの艦船との紛争はあったが、海戦まではいかない遭遇戦闘である。
主に、海賊対海賊のような戦いしかおこらなかった。
だが、明らかにイスパニアの利益は激減しており、本国の怒りのボルテージは上がっているはずである。
一部のイスラム系商人との香辛料貿易が、鈴木軍の資金源になりつつあった。
かつてのイスパニアといえば、反抗すれば自慢の銃砲でおどしていうことを聞かせてきたが、今やそのやり方は全く通じなかった。
有効射程が相手の方が長く、腕もよかった。
狙撃学校を卒業した兵士は狙撃兵として各地の要塞に配属されており、最新の長射程ライフルを装備している。
船長が射殺される事態が何件も発生した。
それに、相手は夜襲が得意で夜に、船に侵入して放火、殺害事件が多発することになる。
特殊部隊学校を卒業した兵士たちも配属されていたのである。
その頃、中国大陸では、マンジュ国が満州で発足し、ヌルハチが王となる。
そして、ついに明に対して宣戦を布告、攻撃が開始される。
明は、イスパニアから武器を購入して対応しているが、マンジュ国側にも満州八旗、現在は九旗にはもっと優れた銃砲部隊が配置されており、大苦戦の状況に陥っていた。
第九旗こそ織田軍であった。
織田信長は、未だ壮健で、しかも以前よりはるかに活き活きと活動していた。
彼こそ戦いの権化と化していた。
第六天魔王、オーダノブナガが大陸で誕生し、明国を大いに苦しめていた。
某男との密約では、織田はマンジュに居残りその地域を支配する約束になっていたが、彼は、明国内に侵入しようと考えていた。
マンジュは、何もない草原や山石である。
このような場所では生活も苦しいに違いない。
あ奴は、儂を広大だが何もない国の王にするつもりに違いない。
「儂は、中華の皇帝になってやる」そう心に秘めていた。
そして、彼を見張る者もいなかった。
例の男は、遥か南方に行ってしまったのだ。
マンジュは、息子の信忠に支配させておけば不義理にはなるまい。
約束を破ることが不義理であることを彼は理解していない。
女真国を実質取り仕切るオーダの命令が全軍に降る、長城を突破し北京を陥落させよ。
夜間に仕掛けられた大量の爆薬が、天に沖するほどの火柱を噴き上げる。
轟音と衝撃波が、明の兵士たちを吹き飛ばす。
鉄の入れ物に入った爆薬がその破片を飛び散らせる。
多くの兵士が、鼓膜をやられて呆然としている。
怒涛のような人並が、押し寄せてくる。
山海関は今、窮地に陥ろうとしていた。
その激しい爆発を遠くから見ていた信長は、「今の爆発は一体なんだ!」と驚愕していた。
今迄みたこともないほどの威力だった。
この爆弾も、あの男から仕入れたものであった。
やはり、あ奴が生きている限りはさかろうてはならんな。
そうひとりごちながら、突撃を命令する。
今や、山海関砦の構造物の半分が瓦礫と化していた。
「突撃!突撃!突撃!」
あらゆるものを切り裂いて、先陣鬼柴田の部隊が吶喊していく。
中国大陸に新たな風が起ころうとしていた。
そして、太平洋上でもそれは現象として表れていた。
ジャワ島に、イスパニア(スペイン、ポルトガル併合)の大艦隊来航の報が、金鵄島ポートダーウィンに届けられたのである。
◇◇◇
太陽を沈ませてなるものか、東洋の蛮族どもを諸共に粉砕してくれん!
これは、コンキスタである。
邪教の者を殲滅することを神が求めているのだ!
エイジアン・コンクエストを成し遂げ神に捧げん、国王フェリペ2世が『無敵艦隊』に東洋の異教徒殲滅を命じたのであった。
無敵艦隊司令官アロンゾ・デレクマンは、ジャワ島で、近海の状況を調べさせていた。
無敵艦隊は、ガレオン船20隻キャラック船など30隻の大艦隊である。
外洋にでるために、このような艦隊構成になっていた。
ガレー船では無理なため本国に置いて来たのである。
アジア諸国の情報網から、敵は各地に要塞を作り、戦艦(ガレオン船)も10隻近く有しているという。
数だけで見れば圧勝であろう。だが、それは邂逅する場所にいなければ意味がない。
情報では、マニラに大規模な根拠地が有るらしい。
まずは、マニラを焼き払う。うまくすれば戦艦ごと焼き払う。
焼き払えなくても敵艦隊はやってくるに違いない。
彼はそう考えた、シンガポールにも敵の根拠地はあるが、本拠はマニラであるようだった。
無敵艦隊が錨を上げる。
目指すは、フィリピンのマニラ湾である。
もはやイスパニア無敵艦隊との決戦はさけられない状況になっていた。
それほど、イスパニア利権(香辛料と奴隷貿易)が侵略されていたのである。
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