第63話 満州八旗
063 満州八旗
義理の父を強制的に織田信長にされてしまったヌルハチは、そのお蔭で急速に力を手に入れる羽目になった。朝鮮半島最大最強の軍団、織田家臣団が、後援に回ったためである。
人切り鬼の集団倭寇、その頭目と目された織田家臣団。
朝鮮半島ではそのような評価で定着していた。
日本鬼子(リーベングイズ)と呼ばれる兵士たちが、愛新覚羅族に力を貸す。
しかも、最新鋭の後送式ライフル(線状を刻まれた銃)とさく裂砲弾を発射するライフル砲(大砲)を備えている。
満州(マンジュ)に大変革の時が訪れたのである。
満州には、満州族がいくつも部族ごとに存在していたが、急速に、撃破統合を開始されることになる。
後に満州八旗(満州の8部族)と呼ばれるものになるのだが。
それに、日本鬼を加えた、満州九鬼と呼ばれる軍団が形成されていく。
後の清国というのは、なぜか、先祖伝来の地、満州地方からすべてが関内(所謂中華)に移動してしまう。そして、父祖の地、マンジュには、住まないのである。
中華での戦争で敗れた際には、父祖の地に戻るつもりだったのかはわからない。
だが、清建国を機に、マンジュには、マンジュ族は希薄になるのである。
そして、今回は、そのマンジュ(満州)こそ、織田家満州九鬼の最後の鬼が守る約束が取り交わされたのである。
簡単に言うと中華(山海関から以南、簡単にいうと万里の長城より南)は清が、満州地方は織田家が分国支配する約束なされたという訳である。
この満州国および朝鮮半島の領有において、歴史的認識を作ることは非常に有用なことであった。これらは、織田族が実行支配する地域になる。
織田族は日本人であり、もともとは、日本の領土という風につながるからである。
この時、信長は、いずれ中華すら、義息子の援助を得れば、奪取できるのではないかとすら考えていた。
まさしく、可能であったかもしれない。
だが、それは、兵器の生産地が日本に存在していればという仮条件が成立していればということになってしまった。
この時、鈴木九十九家は、その秘匿技術の多くを台湾へと移管し始めていた。
極東の島国では何かと、やりづらいからである。
彼らの勢力は、台湾、フィリピンとインドシナへと広がっていた。
中心が日本では遠すぎるのである。というか勢力の端になってしまったのである。
満州九鬼に強力な助っ人が現れていた。
それは、フィリピンの巨大島の占領を終えた、鈴木家の黒備え、騎馬大将前田慶次郎。
赤備え、騎馬大将鈴木重信(旧武田義信)の騎馬部隊である。
信長が、中華地方の制圧を行いたいといったのだが、満州で我慢せよという駆け引きの中で、それでは援軍で手を打つことになったのである。
妥協の産物である。
そもそも、彼らの出番はかなり局限されていたので、彼らは逆に、喜んでいるくらいなのだ。
島での戦闘ではどうしても、騎馬隊の活躍には無理が生じる。
彼らは、重當の本作戦実施まではまだ余裕があった遊び駒である。
余剰兵力の宿命として、別の場所で戦い、維持に掛かる費用を稼ぐことになったのである。
幸いなことに、マンジュは騎馬の国なので、相性はすこぶるよかったのであるが・・・。
だが、彼らは騎馬弓兵ではなく、騎馬銃兵であったのだが。
簡単なことと思われるかもしれないが、そうではない。
元来、馬は、非常に憶病な動物である。
耳元で轟音を轟かせる銃撃をおこなえば、簡単に恐慌に陥り、射手を振り落とすのである。
それを、彼らは、調教し、銃撃の音にも驚かない馬を作り挙げたのである。
その発想は、あの男から出ているのである。
マンジュの地で、その騎馬銃兵の部隊が戦えば、恐るべき強さを発揮した。
しかも、銃の先には、銃剣が付けられており、それで戦うのであるからなお、悪い。
このころの銃は、前装式であるため、銃剣はつけられていない。というか、付けると致命的に弾が込められなくなるので当然である。
さらに、後送式は、連続して発射することが可能である。
どの部族も、2,3回本気で戦えば、勝てないことを知る。
そして、高い金(この場合ゴールド)をだして、鈴木の銃を買おうとしたのである。
マンジュの地は急速にヌルハチ率いる愛新覚羅(アイシンギョロ)族により統合されていくのである。
一方、重當は、マニラ葉巻を吸いながら、次の戦略を考えていた。
コーンパイプは性に合わないのだろうか?
勿論、黒目なのでサングラスも必要ない。
明らかに、誰かの真似をしようしているようだが、一体の何の意味があるのかは不明である。
そもそも、ロッキングチェアで考えている振りをしているだけなのだ。
彼の目標は、すでに明確に決まっている。
シンガプーラ(シンガポール。日本名:昭南島)。この要衝を完全に占領し要塞化する。
彼の次の目標であることは、決まっていたのである。
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