第61話 要塞

061 要塞


銃で武装した兵士たちが、街を警邏している。

マニラは、後にフィリピンの首都となる。

マニラ湾には、コレヒドール島が存在している。

要塞化計画はコレヒドール島から始まる。


偏った考えを持つ男の考えでは、コレヒドール島に要塞を絶対に作らねばならないらしい。

今後、ルソン島防衛には、絶対的に必要なものらしい。


フィリピンには、無数の島があるため、攻略は主要な島しか行われない。

それでも、主要な島は数多い。

現地に通じた、現地人が必要になる。


要塞建設の人夫や水先案内や通訳、様々な人間が雇われていく。

但し、ある種の契約書にサインしなければならない。

血判を押すと、青く光るという極めて珍しい紙である。


流石に、何万人も雇うのでは、膨大な魔力が必要になるため。

契約内容は簡単だ、守秘義務と反逆しないことだけだ。

違反すれば、わかるように、顔にバツの印が浮かび上がる。

そうすると、問答無用で銃殺とされた。


明帝国のスパイが何人か、倭寇のスパイが何十人か銃殺される。

宗教は、現地人の宗教は容認しつつも、キリスト教、イスラム教を排除しつつ、カラスを拝むように仕向けられていく。


カラスを拝む方が食事が多いとか、給金がおおいとかの特典が付けられる。

無理やり排除することはしないが、徐々に浸透させていくという作戦であった。

戦争孤児たちは特にその影響を受けることになる。

飯を食わせてくれる、カラス神社が作られた。

ここで、拝めば飯を食わせてくれる。

しかも、偶にとんでもないウマイ料理も出てくる。

彼らは、いずれ神の戦士となるのである。

勿論自爆攻撃などは行わせない。

彼らは、特殊部隊の仕官になるのだ。


ルソン島の面積は本州の半分程度と大変に広いのだが、山がちである。

そこで、さっそく、高砂兵が、山間地域を巡って、布教活動を行うのである。

この時点で、イギリスの海賊がもたらしたパラゴムの木の栽培活動は台湾で始まっている。

このルソンでも直ちに開始されることになる。


ゴムは軍需物資にはなくてはならない。

多くの地域で、金による兵士の勧誘が行われ、ミンダナオ島攻略部隊として送り出される。

敵か味方かわからない人間をどんどんと他の島に送れば、ルソン島が平和になるという、打算的な考えも存在した。

彼らは、安い賃金でも喜んで、出兵した。

本当にやる気がある者は、台湾に送られ訓練を受けることになる。


ルソンとミンダナオの間には、セブ島があり、スペイン人の部隊が未だ存在したが、圧倒的な艦砲射撃で壊滅させられた。

その後、海兵隊により占領、殲滅される。


このフィリピンでの紛争は、直ちに本国に伝えられる。

だが、如何せん距離が遠かったのである。


ミンダナオ島には、ダバオ湾、アンボサンガの2面から上陸が行われる。

そもそも、住民もそれほど住んでおらず、西洋各国も駐留していなかったため、素早く教化されていく。


台湾島、ルソン島、ミンダナオ島とかなりに広範囲の面積を掌握したため、その統治に時間がかかるようになる。特に、各島での食料生産には、かなりの力が必要となった。


連合艦隊のみが、各地に進出し、敵船の破壊、拿捕、敵基地への砲撃を繰り返す。

倭寇勢力やポルトガル、スペイン船の破壊、拿捕が相次ぐ。

それらは、回航されて、『連合艦隊』の戦力へと転換されていく。

そのやり口は正に海賊そのものだった。


・・・・・・・・・


1580年(天正8年)

フィリピン侵攻作戦から月日が流れた。

流石に、戦闘続きでは、統治ができない。

確実に、日本化を行わねば、確実に日本の領地であることを認めさせることは難しい。

ここでも、太田党が大変な大活躍を見せた。

太田党とは、太田大学頭を筆頭に、農業改革を行うもの達の集団である。すでに職能集団化している。職能化集団はほかにも、甲賀忍者たちが、化学集団。鉄砲鍛冶が製鉄集団。

窯業集団(信楽焼き)、透明ガラスの製造なども始めている。

など、かなり先鋭化し始めていた。


台湾、ルソン、ミンダナオにおいて、農業改革を行い、食料生産計画を立て、実行している。

米作、小麦、芋の生産を奨励し、人々の胃袋を満たす重要な仕事である。

それ以外にも、サトウキビ、ゴムの生産もつかさどる部門である。

鉄製の農具と牛馬耕で生産を高めることが可能となっていた。


農業からあぶれるようなものは、漁業を行う。

それでもあぶれるものは、軍への入隊となる。

各地で日本語教育が行われ、日本語のできないものは、入隊できないということになる。

現地人の言語には、敢えて踏み込まないが、軍入隊には、日本語が必須となる。


では、日本語ができなくて仕事にあぶれる者はどうするのか?

傭兵である。ジャンク船に乗り、突撃部隊となる。仕事は主に海賊である。


コレヒドール要塞が完成し、マニラが、太平洋方面軍の前線基地として機能し始める。

台湾が本部となる。


九十九重當は、さらにフィリピン総督に任命されていた。

台湾という小さな島とルソン、ミンダナオという小さな島を領有したことから、南海王の称号も天皇から送られる。


「南海王は、さらに多くの島々を攻略することを望む」天皇からの激励が送られる。

彼らは知らない。その島が相当に大きく、全て足せば、日本本土程度にはなることを。

見たことがないのだから仕方ないことだった。

謙遜して、わざと小さき島を占領などと書いていたのだ。


彼の子供(実際の子どもではなく、子供と呼んでいた者たち)は大きな土地の領主に任じられている。ただ大きすぎて、本国から郎党を引き連れてきても治めるのに苦労することが多かった。そのため、現地人の有力者を配下にして統治するも者が多かった。


直営の軍団は未だ、その動きを止めることはなかった。




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