第59話 倭寇
059 倭寇
台湾島の倭寇たちはそのほとんどが壊滅するか、降伏した。
そして、台湾島はほぼ完全に占領される。
台湾総統に鈴木九十九重當が就任する。
日本国の委任統治領とされ、これは、中華・明にも宣言される。
明にとっては、化外の地がどうなろうと知ったことではなかったが。
しかし、『悪魔の艦隊』が、台湾島に存在するという事実を知ることになる。
朝鮮半島では、倭人たちが活発化し、そのほとんどを占領しつつあった。
その倭人どもの息子が、悪魔の艦隊の指揮官であることが明の朝廷に衝撃を与える。
遼東半島の付け根部分では、女真族と明軍がたびたび戦っていた。
女真族がのちに『金』という国を作るが、以前にも『金』が存在するため、『後金』と表示される。
『後金』とは、明を撃ち破り、後に清帝国を打ち立てる、満州族の国名である。
しかし現在は、倭寇打倒の明の大軍が、駐留している。
天津の敗北で、明の朝廷の威信は地に落ちてしまった。
一方的な攻撃になすすべがなかったという情報が満州に流れていた。
明のような巨大国家の場合、各地で反乱が相次ぐとそれを抑えるすべがなくなっていく。
そして、明軍の敗北の情報がそれらに伝われば、勢いづかせることになる。
今までは、日和見を決め込んでいた勢力までが、イナゴのように発生する。
一方その遼東半島では、ついに明軍とその尖兵になされている女真族が織田・徳川連合軍と相対していた。
実際のところ、織田軍と言い換えた方がいいくらい、徳川軍はすり減っていた。
織田軍には、武田軍のあぶれ者たちも参加していた。(日本の関東部分での戦闘はほぼ終局していたためリストラされた。)
日本ではほぼ戦国は終わりつつあり、国内では、傭兵が募集されていた。
朝鮮半島では、戦争が真っ盛りだったからである。
征夷大将軍には、関東管領上杉輝虎(謙信)が就任した。越前、越中、加賀、美濃を領有し、東北各国をも、旗下に組み入れた。それ以前に、関東諸国も旗下に加わっている。
大国として、武田家が残る程度である。
美濃は、織田信長から、鈴木重當が受け取っていたものである。
明・朝鮮海軍殲滅作戦の報酬である。
尾張は、北畠に譲られることになる。もはや一国程度残ったとしても何もできないのは明らかだった。
三河も同様の運命をたどらざるを得ないであろう。
いずれ北畠が委任統治することになる。
重當から、日本の朝廷に届けられた書状には、以下のようなことが掛かれていた。
『南海に、台湾という小さき島あり、蛮族と海賊の盤踞する地なり、我、陛下の御力を示し、蛮族どもを薫陶し、従順ならしめん。蛮族ども、我を王と誤認し、仰ぐ。
我は陛下の忠実なる臣なりしが、蛮族どもを使役せしむ為、総統なる職に就き、陛下の御威光を示さんこととし候。』
台湾という小さい島(海賊・野蛮人在住)を陛下のお蔭で占領したよ、相手が勘違いしているから、総統という職名を名乗っていうこときかせるからね。
ひいては、それを認めてねという内容である。
果たして、台湾が小さな島なのかどうかはわからない。しかし、付属の贈り物には、金銀、真珠が付されており、朝廷は快くこれを許諾したという。
「よいか、倭寇ども、この証文に署名した以上、決して逆らうことは許されぬ、命を賭けて、重當様の為に、戦え!さすれば、汝らにも、栄耀栄華が降り注ぐであろう!」
戸次道雪の叱咤が、元倭寇たちに降り注ぐ。
彼らは、悪魔の契約書、八咫烏起請文に署名させられた。
勿論、反対した場合は、銃殺刑が待っているのだ。サインせざるを得なかったに違いない。
数千人の倭寇とそれに数倍する倭寇の家族たちが、この台湾島で戦線に加わったのである。
こうして、台湾の高雄港の整備と要塞工事化が開始される。
同時期には、日本からの傭兵もかなり募集されていた。
日本では、ほぼ戦争が終わり、食い詰め者も数多く出ていた。
工兵部隊は、軽い戦闘訓練はあるが基本的に戦闘に参加しない。
数万人が、台湾に渡り港湾建設作業に加わることになった。
基隆港でも同様の工事が行われていたので、多くの人員が必要になったのである。
中国本土からも苦力(クーリー)として多くの人間が渡ってきたが、厳しい線引きがなされ、決して現地人化させないような分離措置が取られた。
情報管制も当然厳しく徹底的になされたのである。
台湾はあくまでも日本人の国にしなければ意味がないからである。
世界に認めさせるためには、中国語を国語にするわけにはいかなかったのである。
見方によれば弾圧ともとれる強権を発動させていたが、それでもたくさんの苦力がやってきた。条件が良いらしかった。それだけ中国本土が荒れているのであろう。
苦力は受け入れるが、決して滞在ビザを出さないのが、この男のやり方である。
過去の(未来の)記憶が、同化、土着をよしとしないのである。
あくまでも、台湾は、原住民と日本の領土であることを認めさせるための方法論であると嘯くが、敵国、中国民国を忘れることができないのであろう。
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