第58話 高山国
058 高山国
後の豊臣秀吉は、台湾島を高山国として認識していたようであり、朝貢するように使節を送ったという。
しかし、実際には、そのような国は存在せず、使節は使命を果たせなかったのだという。
頭のおかしいあの男には、そのような歴史の知識はなかったが、台湾島には、高砂族がすんでいると信じていた。そもそも、その高砂族というのが、この高山国の部族という意味らしいのだから、高砂族というもの自体が本当は存在しなかった。
しかし、台湾島の高山地区には、様々な部族が独立して存在していたことは事実である。
「高砂族を懐柔して、わが軍の一部としたい」
男の頭の中には、かつての歴史が刻まれている。
勇猛果敢な高砂族は彼にとっては、必要な武力だと考えていたのである。
「そのような者どもがいるのですか?」
「そうだ、誰かを使者として使わし懐柔せしめよ」
「は」
こうして、高砂族懐柔部隊が編制される。
山から下りた原住民を取り込み、その者に仲介させて、従属させるのである。
そういうもの達(山から下りた者)は、倭寇の中に複数いたのである。
「彼らには、刃物、たばこ、酒(焼酎)を貢物としてもっていけ。山羊や驢馬も喜ばれるはずだ」日本酒では、アルコール度数が低いため腐る可能性を考慮して、焼酎が選択される。
原住民のシャーマンがトランス状態を作り出す上で、度数の高い物の方が好まれる可能性が考慮されていた。
男の頭の中には、原住民懐柔の手法が刻まれている。
そして、それは最も友好的に効果を発揮することになる。
特に嗜好品は良く効く。
数百名の人間が各地の山に派遣されていく。
これらは、今後いくつも発生する原住民相手の交渉に向いている人間の発掘調査も兼ねている。
一部の部族では、首を刈られる事態が発生したが、おおむね大多数の部族は、懐柔に成功した。
最後まで反抗した部族は、撃滅される。
それは他部族への脅しともなる。
嗜好品は非常に大きな力を発揮したが、それ以上に、蚊取り線香と鉄砲が大きな力を示したという。
鉄砲は神の武器(雷のようなもの)と勘違いされたらしい。
こうして、高山部族の取り込みも完了する。彼らは高砂部隊として、今後軍に組み込まれていくことになる。
台湾島の太平洋側には、平地がほぼない。
故に進軍は台湾海峡方面からとなる。
輸送任務の終了を一時完了した連合艦隊は、台湾島西部の各所を砲撃していた。
射程距離の関係で、奥地にまで弾を飛ばすことはできないが、倭寇の基地は必ず海の近くに存在するため、効果は充分あった。
ジャンク船を破壊し、砦を吹き飛ばす。
徐々に北部から南部へと下っていくのである。
それに合わせて、陸軍部隊(大名家の軍)も進撃していく。
高山からのゲリラ部隊もそれに加わるようになると、倭寇たちは、非常に苦しい立場に追い込まれていくことになる。
平坦地になると、赤い鎧をまとった騎馬隊すら登場するようになる。
砦に入り籠城すれば、迫撃砲の的になるといったひどい有様になった。
武田の赤備え、前田の黒備え。
鉄砲騎馬隊での移動射撃攻撃は、平野部での戦闘に革命的な威力を発揮した。
水陸一体攻撃で、台湾の地はどんどんとカラス化されていく。
皆が鷲の旗と信じている旗が翻る。双頭の八咫烏旗。よく見れば足が3本書かれている
のである。鷲か鴉かは、今一つわからないのだが。
しかし、高砂族は、この八咫烏をあがめるようになる。
拝めば、酒や武器、たばこ、蚊取り線香がもらえるのだ、誰もが拝むであろう。
台湾北部の半分以上が占領される事態になり、倭寇の諸勢力もことの重大性に気づき始める。敵は組織化された専業の軍隊であり、陸海に渡り専用軍隊を保有し、山岳部族を取り込み、その山岳部でもゲリラ戦を展開する。
今までは、ともに争い続けていた彼ら倭寇諸勢力も危機感から、南部で結集し、対抗する必要があることを認識しつつあった。
日々緊迫する状況の中倭寇勢力の頭目たちは会議を行うようになっていた。
勢力をまとめようとすると、誰を頭にするかで結局もめることになる。
そして、まとまらないから争っているのである。
そして、彼らの戦況分析は間違っていた。
彼らは、陸海軍以外にも、海兵隊をもっていた。
海兵隊こそが、鈴木家中でも最強の戦闘集団であった。
海兵隊が、艦隊の援護を受け、高雄に上陸を開始した。
両面攻撃(南北からの挟撃)である。
瞬く間に占領地域が広がっていく。
彼らは、小銃、大口径ライフル、迫撃砲を装備し、無人の野を行くがごとく進んでいく。
「降伏せよ!トウシャン!」日本語と中国語で呼ばわれる。
艦砲射撃の届かない場所に、砦が存在する。
海兵隊はその周囲を包囲する。
敵の射程外から狙撃を行い。
迫撃砲を発射する。
「あれをもってこい!」
ついにアレが登場する。
未来の世界ではロシア製RPG7と呼ばれる兵器によく似たアレだった。
因みに、バズーカ砲に似たアレも存在する。
男には、どちらが良いのか区別ができなかったので、両方を作ることにしたのである。
バシュ!という音とともに、筒の後方にバックブラストを吐き出し弾頭が飛んでいく。
変速的な動きをしつつも、門扉に直撃し、爆発を起こす。
「突撃!」
「うおおおお」
銃剣をつけた小銃を構えて兵士たちが突撃していく。
「支援砲撃!」
バスッ、バスッと次々と迫撃砲が発射される。
彼らだけが世界大戦をたたかっているかのようだ。
今は、戦国時代なのに。
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