第56話 山東半島沖海戦
056 山東半島沖海戦
次々と周囲の人間が血を飛び散らせて、クルクル回りながらと倒れていく。
ヒューンという怖ろしい音で接近する銃弾が木片を飛び散らせる。
一方的な攻撃!こちらの火縄銃の射程の遥か彼方から飛来する銃弾。
こんな恐ろしい戦場は初めてだった。
この時代の船に艦橋などはないため、皆が公平に甲板に立っているが、それは致命的な間違いである。
敵船のマストトップの狙撃手からは良く見えたのである。
周囲の兵士や部下たちが次々と死んでいく。甲板が赤く染まっていく。
第2艦隊第2戦隊の艦上には、あの頭が少しおかしい男も乗っていた。
彼の乗る船には、キャビンがある。
男はその屋根の上の部分に寝ころがっている。
巨大な銃を構えて狙っている。
彼の構える銃は、
勿論、この時代に戦車(鋼鉄製)などはない。
男はかく語りき。
「そうではない、彼らはきっと亀甲船という船で接近してくるのだ!」
男は、日本史で習った亀甲船という物を覚えていたのである。
ジャンク船を改造し屋根を張り、槍や剣を突き立てた剣山のような船であるらしい。
これにより、秀吉軍がやられたという。情報をもっていた。真偽は不明だが。
「この亀甲船を打ち破るには、どうしてもフィフティーキャルが必要なのだ!」と言い張ったのである。
「さすがは殿でございます。」
間髪入れず追従する戸次道雪。
これでこの話は決まったが、通常の回路の人間には、大砲を撃ち込めばなんの問題があるのか?と疑問をもったが、戸次に歯向かうことは
謎の言葉フィフティーキャルとは、何のことだろう?と思いつつも設計が始まると、12.7mm口径を発射する大型ライフルであることが判明する。
じゃあ、そういえよ!
と技師はそう思ったかどうかはわからない。
だが、その12.7mmNATO弾は猛烈な威力があった。
轟音と物凄い反動がやってくるのだが、鈴木何某は何事もなくそれを受け止める。
一発で2,3人を貫通死傷させる威力があった。甲板に血肉が飛び散る。
そして、その恐るべき銃弾を男は、ほぼ無意識で高速連射繰り返す。
狙いすらつけていないのではないか。
「死ね死ね死ね」男は、何をそんなに憎んでいるだろうか。
動く者すべてを撃ち殺す男の殲滅射撃。
それは銃身が焼けて赤くなるまで続く。
このような状況にも関わらず撤退できずに、接近する明・朝鮮連合軍、その数10隻。
彼我の距離、5町。
彼らは完全に包囲されてしまった。
逃げることは不可能であった。
「己!有象無象が~!」鈴木何某は絶叫して立ち上がる。
「掛かってこい!」彼が今度とりついた武器は、所謂ガトリングガンであった。
「中華には、人間の海のがあるのだ、単発ではとても間に合わないのだ!」
男の話は所謂中国軍の人海戦術のことを言っているのかは不明だが、彼の常識は世界の非常識。だが、無駄に権威だけはあるために、誰も逆らうことはできないのである。
こうして、手動式ガトリングガンが設計される。
機銃の方も同時に進められているが、こちらの方が製作過程が簡単だったため先に実現された。
ガガガガ!ガトリングガンが唸る。
男の驚異的な
弾丸の豪雨が、敵船を薙ぎ払う。
すでに甲板に、無事な兵士すらいないのに。
「敵が白旗を掲げました」
たった2隻だけが生き残っていた。
そして白旗を掲げたのである。
一方的な虐殺がようやく終わろうとしていた。
本来は、ここから白兵戦闘が行われるのであるが・・・。
「見敵必殺!」男は、火炎手りゅう弾を投擲した。
「殿!」
さすがに、戸次が止めに入るが、投げられた物までも止めることは不可能。
大きな弧を描いてそれは目標に向かっていき爆発する。
ド~ン!
あっという間に火災が巻き起こる。
こうして、たった一隻だけが何とか生き残ることができた。
しかし、その甲板上にも数えきれないほどの遺体が横たわっていた。
その後連合艦隊は、山東半島を回り込み、2隊に別れ、威海と煙台の都市に艦砲射撃を加えて人々に恐怖を植え付けることに成功する。
次は、遼東半島の大連を砲撃破壊。
そして、次は天津へと進行して砲撃を加える。
こうして、黄海・渤海の諸都市を砲撃し、日本海軍の恐ろしさを見せつけたのである。
これは倭寇どころの話ではなく、全くスケールの違う殲滅破壊行動であった。
その代わり、略奪などは起こらなかった。
上陸をしなかったためである。
倭国の海軍は人間にあらず、悪魔の化身であるというような逸話になってその地に残ることになる。
だが煙台では、上陸作戦も実施された。
その際には、迫撃砲の試射も行われデータの収集が行われたのだが、歴史書にはその記録は一切残っていない。
煙台では、緑色の悪魔が攻め寄せてきて、村人を大虐殺したという逸話となった。
『緑倭鬼がくるぞ』といわれれば泣く子も黙ることになる。
輸送破壊作戦が完全に封じられ、織田・徳川連合軍は攻勢を活発化し、平壌への攻勢圧力を強めていくのだった。
また、天津の破壊は、明国に重大な悪影響を及ぼすことになる。
とりわけ、天津は北京に近かったため明の威光が大きく損なわれたのである。
そして、海軍の壊滅も国情を悪化させていく要因の一つとなる。
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