第55話 連合艦隊、出撃ス。

055 連合艦隊、出撃ス。


第1艦隊 第1戦隊 大和 長門 扶桑 伊勢

     第2戦隊 武蔵 陸奥 山城 日向

第2艦隊 第1戦隊 金剛 榛名 比叡 霧島

     第2戦隊 神武 応神 青龍 黄龍

計16隻の大艦隊が薩摩国錦江湾に集結していた。


連合艦隊の司令長官は、頭のおかしい男。鈴木何某。

第1艦隊司令 小早川隆景中将。

第2艦隊司令 九鬼 澄隆中将。


なお、連合艦隊とは、第1艦隊と第2艦隊全体を総称してそう呼んでいる。

艦隊の行動の邪魔にならないように、鈴木何某は、第2艦隊の第2戦隊の神武に総司令部と称して、閉じ込められている模様。


なお、第2艦隊の第2戦隊のみ、より大型化したガレオン戦艦である。

造船技術が進歩し、より大型化しても同様に機敏に動くことに成功したためである。


「本作戦は、義理の父、織田上総介殿への救援の一環として、敵、明・朝鮮海軍の撃滅および、その根拠地の完全破壊を目標としている。だが、決して死んではならぬ。この戦いは、来るべき我らの本当の戦略を実行するうえでのまたとない訓練の場なのである。

この戦いは、実戦形式の訓練と同じである。しかし敵も必死でかかってくるであろう。

決して侮ることなく、全力を尽くせ。

諸君らの日ごろの訓練の成果を見せる時が来たのだ。

敵を一瞬で撃滅し、真の目的攻略に向かうその時にこそ、君らの身命を賭す時なのである。

いざ征かん!我らの前に敵はなし。我らの後にも敵はなし。各員の奮励努力を期待する。以上」


万に達する兵士たちに、鈴木何某は激励を行った。

訓練ならば生死をかけてするなよ、と言いたい者がいたかもしれない。

しかし、彼らのほとんどは、何某を父と慕う親衛隊教育を受けている者たちであった。

「重當万歳!重當万歳!」絶叫が、木霊する。


「全員乗船!」艦隊司令官からの命令が下る。


ガレオン船の帆柱に次々とセイルが掲げられる。

それらが風を受けて膨らむ。

艦隊は、錦江湾を出港、単縦陣で、黄海を目指すのであった。


そのころ、山東半島の登州、現在の山東省煙台周辺には、倭寇迎撃を目的に明の海軍基地があり、今回の戦争ではその基地から、朝鮮半島救援に艦隊を派遣していた。

直接戦闘をおこなえば、日本刀の切れ味を存分に味わうことになるため、輸送船団を攻撃し、敵の撤退をさせる作戦が企図された。


地上でも船上でも、倭人は恐ろしい戦士だった。

怖ろしい切れ味の日本刀、それを使い熟す剣法は、明・朝鮮兵にすれば脅威そのものであった。

だが、さらに恐ろしいものは、敵の要塞である。

極めて固く、そして、鉄砲の威力がものすごい。

此方の鉄砲の三倍の射程を持っている場合すらあった。

そして、要塞は、その鉄砲の威力の上に設計されていた。


突撃攻撃のとき、明らかに指揮官を狙撃しているため、こちらの有力な指揮官が何人も戦死していた。

試しに、指揮官の格好をさせた兵士を立てると、やはり見事に撃ち殺されたのである。

彼らの銃は、一斉射撃用の武器ではなくなっているということであった。


因みに、その銃は今回の侵略の代償として送り込まれた後送式ライフル銃である。

どの国の軍隊も指揮官を殺されると、後は壊乱するのみであった。


そういうこともあり陸上戦力では圧倒的に不利な明・朝鮮連合軍は、海軍による、後方破壊作戦を選択しているのであった。


一方、織田・徳川連合軍も後方輸送さえ確実にできれば、平壌も落とすことが可能であった。

京城(ソウル)要塞は、確実に機能していた。寄せ手を確実に殺し尽くすほどの威力を持っていた。

彼らからすると、ぜひとも京城に攻めてきてほしい、のだった。

輸送船を何度も焼き討ちされ、略奪されてきたが、今回は、義理の息子が重い腰をようやく挙げてくれる。信長は、いつになく上機嫌であった。


後に悪魔の艦隊と呼ばれるようになる圧倒的な火力と殲滅力を発揮する艦隊は、肥前沖(現在の長崎県)まで陸沿いに進み、済州島を右に見ながら黄海へと侵入していく。

山東半島が見えてくると、敵の艦隊も出撃してくるのだった。

このころは、夜戦をするようなことは基本ないので日中に海戦を行わざるを得ない。

明・朝鮮海軍の船は所謂ジャンク船である。


倭寇?迎撃のために出動した艦隊は、まだ準備がしきれていない状態で、さらにジャンク船には大砲は積載されていなかった。大砲はまだ普及していなかったのである。故に鉄砲・弓矢による攻撃後、隣接しての白兵戦という形にならざるを得ないのである。


ジャンク船艦隊を見て、連合艦隊は、進路を右へとそれ始める。

大砲は基本舷側に備えているための砲撃方向を向けるための回頭である。


彼我の距離20町(約2000m)。

ジャンク船からの攻撃方法は未だない。

単従陣の連合艦隊は、一度腹を見せながら、方向転換し、彼らを取り巻くような航行を行っている。


「撃て!」

「撃ち~方始め!」

マストトップにいた兵士が、一斉射撃の命令の旗を打ち振る。


舷側7門の大砲が一斉に火を噴く。

甲板の3門も同様に火を噴く。

完全に、狙いなど不要である。

さく裂弾の信管は、木造構造物を突き抜けて初めてさく裂する。

かなりの数の砲弾は水面に着弾して爆発している。

水柱と火柱が海面をかき乱す。


もともと、明・朝鮮海軍は、100隻程度のジャンク船であったが、今や半数は海の藻屑となり果てていた。


それでも果敢に接近を試みる明朝鮮連合軍。

彼我の距離10町。


「狙撃開始!」

「狙撃開~始!」

狙撃ライフルの射程距離は、最長1200m程度まで改良されていた。

主に、装薬を増やして対応している。

7.62mm口径ライフルが発射炎と轟音を吐き出す。

彼らの船には、〇〇の死神と呼ばれるような射撃の神のような達人たちが多く乗っていた。


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