第54話 連合艦隊

054 連合艦隊


琉球本島が攻略されてから2年の歳月が流れ去った。


1575年(天正3年)

鈴木軍は、琉球本島は勿論、周辺諸島を攻略し、着々と支配地域を広げていた。

1575年といえば、歴史上有名な、長篠の合戦が起こった年であったが、当然、不戦同盟を結んでいる、武田・織田なので発生していなかった。

そしてトピックとして、火縄銃の大量運用があげられるが、それはすでに鈴木軍によって遥か以前から行われていた。


この年、奄美大島では、九鬼義隆が快挙を達成する。

そう、真珠大名が黒真珠大名への第一歩を踏み出したのである。

ただし、玉の大きさはそれほどとはいかなかった。

成長させるための時間が足りなかったためである。


初の黒真珠は、時の天皇、正親町天皇に献上される。

天皇はことのほか喜び、大和守に、大納言の位を与えることを宣言する。


彼はこうして、征戎大将軍兼征蛮大将軍正三位権大納言守右近衛中将守大和守穂積朝臣重當となった。すでに、ここまで来ると正式に覚えることが不可能なレベルである。


一方、朝鮮半島に侵攻した織田・徳川連合軍は、釜山こそ簡単に占領し、橋頭保を築いたが、日本との風土の差や、食料不足などに苦しめられる。

それでも、京城(現在のソウル)までは攻略し、兵站線の強化と兵の訓練に努めている。

ここまででも、相当な面積である。


明軍が朝鮮の援軍として到着し、激しい攻防戦を繰り広げているが、やはり、火縄銃の性能が勝り、何とか 打ち勝っている状況だった。

じっくり占領していくことにより、激しい負け戦を経験せずに済んでいる。

しかし、明らかに疲弊してはいた。


だが、明軍とてそれは同様であった。

明国自体が大きく傾きつつあった。各地で内乱、海岸線では倭寇が活発に活動し、後金の動きも気になるところであった。まさに内憂外患という四字熟語はこのような時のためにある。


このころの信長は、常に興奮状態になっており、逆らうものを皆殺しにするという事態も何度も起こしていた。表面上だけ降伏し、すぐに裏切る民族に激怒していたのである。


織田軍の兵站線を襲っているのは、朝鮮と明の海軍であり、この時の織田軍には、九鬼などの有力な水軍がなかったために苦労していたのである。


しかし、助言通り、対馬を要塞化していたため、補給はできていたのである。

対馬の要塞化工事は、鈴木家の工兵部隊により、コンクリート製の強固なものであった。


織田信長は、義弟鈴木大和守に海軍による、敵海上兵力の撃滅要請を再三送っていた。

敵海軍は、天津を母港にもち、山東半島から出撃し、織田軍の輸送船を襲っている。


それを、撃滅すること依頼してきていたのである。

それに対する褒美は、半島を完全掌握したのちは、日本本国領土の半分を義弟に譲るというかなり大胆なものであった。


信長も、日本の小ささに気が付き始めていたのである。

また、それだけこの明、朝鮮海軍に手を焼いていたのである。


だが、その義弟はというと、彼もまた今までになく苦しんでいたのである。

資金繰りである。


彼の奇妙な命令が大量の金を消費する。

まずは、製鉄所である。

これは、まさに金食い虫の象徴であった。

製鉄の為に、まずは鉄を集める。そして燃料の石炭。

工場への投資。人件費と馬鹿みたいに金を消費している。

そして、それと同時に、動力を得るために蒸気機関を使い始めているのだが、これもまた馬鹿みたいに金を食うのである。


しかし、これらは産業革命にはどうしても必要な投資でもあった。

男が目指している世界を誰も見ることはできなかったに違いない。あまりにもかけ離れていたためである。


今孔明と呼ばれる竹中半兵衛ですら、その片鱗すら想像できなかったのである。

戸次道雪は、「さすがは殿!まさにその通りにいたしましょう」と唯々諾々と命令に服従している。彼にとっては、命令の結果など気にはならない。

言う通りにすることこそが重要なのであった。


次に金を食うのが、連合艦隊の存在である。

始めに旭日艦隊と名付けられたそれだったが、太平洋を席捲するために、数が足らんと男が言い出す始末である。


日本の各地の港(呉、佐世保、和歌山下津港などの港湾)で建造されている戦艦。これが金を蒸発させていく。

それらの港では、造船バブルが発生しているほどだ。

戦艦の数が増えたことにより、第1艦隊と第2艦隊に分割され、それらを呼称するために、連合艦隊という符丁が発生した。


戦艦は現在16隻である。

第1艦隊、第2艦隊は各8隻となっていた。

第1艦隊の根拠地は、琉球。

第2艦隊は、薩摩錦江湾とされた。


現在、経済情勢を逆転させるために、黒真珠販売が西欧で行われている。

これを販売できれば、経済的窮地を脱することが可能になると目されていた。

販売員は、英国の海賊の何とかさん。そう、ドレーク提督である。残念ながら、自ら儲けた金のかなりを身代金に使ってしまったので、まだサーの称号を貰っていなかった。

しかし、近ごろは、ゴムの種を収穫して、儲けているのだ。

ついでに、黒真珠の販売も開始したというところであった。


その連合艦隊に出撃命令が下る。

明・朝鮮連合軍海軍部隊の撃滅と根拠地の完全破壊が命令目標とされる。

山東半島登州、天津、遼東半島の敵根拠地の攻撃。

敵艦隊の殲滅。

薩摩錦江湾には、16隻のガレオン戦艦が、錨を降ろしている。

艀船が、食料、水などを艦隊に補給している。

海軍の搭乗員は、九鬼、小早川水軍のものが主である。


甲板の狙撃兵たちは、海兵隊の狙撃手。

船上突撃を行うもの達は、海兵隊員である。

今回は、根拠地の上陸戦闘も行う予定であるので、上陸作戦ように海兵隊も積載されているのだ。

1隻に500名、16隻で8000名となる。


内地(本土)で戦争にあぶれたもの達が、今、淡路や薩摩に殺到しているらしい。

内地では、ほぼ戦国時代が終結しようとしていた。

故に、武田家からの武士も見られるという。


織田家は、内地で兵士の募集を行っているが、鈴木家の方が圧倒的に人気であったという。

戦死率が全く違うので当たり前といえば当たり前であった。





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