第46話 三国同盟
046 三国同盟
1573年(天正元年)
越後、春日山城。
天然の要害に守られた堅城である。
そこに、織田信長、武田信玄がいた。
勿論城主の上杉謙信もいた。
この三国の頭領同士で会議が行われていたのである。
この年までに、三領主の間で激しい戦いはなかった。
上杉、武田の川中島は、鈴木の斡旋というか、意見により、激しい戦いは起こらなかった。
武田に恐るべき鉄砲が輸出されており、上杉が進撃に躊躇したこともある。
そして、上杉には、鈴木との貿易があり、富を蓄財していた。さらに、本願寺から、加賀占領は構わないとの意向を貰っていたため、加賀、能登の占領に邁進していた。
一向宗の国(加賀一向一揆)で何が起こっていたのか、それは、一部ものものによる専横であった。
本願寺の意図と違う政治を行い、国内は大混乱していた。
こうして、上杉は一部の一向宗を殲滅し、支配下におかれた。
一方、武田は、駿河、遠江方面へと侵略を進めていた。
これも、最強の騎馬隊と鉄砲隊のお蔭であった。
さらに、義信事件でも打撃が最小限に終わったことも大きかった。
こういう事件は、結局粛清の嵐が吹き荒れてしまい、家臣に疑心暗鬼を産み、実質的に勇将、猛将が殺されて戦力が低下してしまう。
義信事件を無血で決着し、戦力低下を最小限に抑えるころができた。
さらに、義信の代金として、火縄銃などが送られたのである。
鈴木家とのより強い絆をも得ることができたのである。
そして、この戦国の両雄は、川中島を回避することで、無理をしなかったのである。
さらにさらに驚くべきことに、この世界の上杉謙信は結婚している。
一体何が起こったのか?そう、彼は神仏の加護を受けるために一心に祈っていた。
その時、驚くべきことが起こったのである。
信託!が降りたのである。
時間は遡る。
「金色の女神がそちの目の前に現れる。
いつものように、祈禱室で一心不乱に、護摩を焚いて経を唱えていた時に声が聞こえたのである。
「金色の女神?なんとも妙なものだな」金運でもやってきそうだが。その時は、気の迷いと忘れ去ろうとしていたのであった。
護摩行など激しい祈祷は、偶にトランス状態に陥る場合がある。
その時、奇妙な現象を見ることが有る。単なる錯覚か、それとも本当に神の言葉なのか、それは、祈祷者本人の考えによるのである。
鈴木の軍船が直江津についたという。
例によって、クソウズを買い取りに来たのであろう。
あんな液体を何につかっているのか?全く不可解だが、金をだして買っていくのだ。使い道があるのだろうが。変わり者よと捨て置きたいが、かの大名は今や西日本を席捲している。
鉄砲。鈴木製のそれは、甲斐に大量に出回っている。恐ろしく頑丈で、精度が高い。
我等も、それを恐れて侵略できん。あれを手に入れたい者よ。謙信は、そう考えていた。
「うむ、船に使者をだせ、種子島の購入について、依頼したい」謙信が命じると。
「は、それが鈴木家の御息女が、殿にご挨拶したいと申し出ておられます。如何なさいましょう」小姓が言ってくる。
「息女、女子供が船にのってくるのか?」船の旅はとても危険なのだ。迷信深い船乗りは女を船に乗せるのすら嫌がる者もいるくらいである。なんでも、海の女神が嫉妬するとかなんとか。
「よかろう、せっかくだ。その娘とやらに縋ってみるか」上手く運べば、鉄砲が手に入るかもしれない。そんな軽い気持ちだった。歴戦の勇士の自分がまさか小娘に後れを取るなど万に一つもないのだから。
広間に客がきたのでと小姓が呼びにくる。
勿論武装の有無の点検も済んでいる。
万万が一の暗殺があるかもしれないからである。
謙信は勿論そんなことは全くありえないと確信している。
毘沙門天の化身の自分が女子供に後れを取るわけがないのだ!
高座から、見るとそこには、なんと金色の人形のような娘が椅子に座って待っていた。
西洋式のドレスを着ている。
「あ!」謙信は声を放ちそうになった。
何という美しさよ!
白い肌に青い眼、金髪がサラサラと肩に流れている。
そして、赤い唇。
怖ろしく、可愛い、美しい姿に目を離せないでいる謙信。彼は生涯これほどの美しい女を見たことがなかった。
「鈴木ナディアでございます。」娘が立ち上がり、礼をする。
「上杉輝虎謙信じゃ」
「失礼します、拙者、鈴木大和守が家臣、竹中半兵衛重門と申します、姫は、西洋式の生活をしておりますれば、正座はご容赦くださいませ」竹中重門は、正座で伏している。
「うむ、かまわんぞ、姫はあちらの国の人なのか」
「はい、母の母が露西亜の国の出と聞いております」
「そうか、しかし、言葉は問題ないようじゃ」
「はい、生活上はこちらの国の言葉しか使いませんから」
露西亜語を使うのは、大和守と母とその付き人、財津だけである。
クウォーターだが、先祖返りが強くでたため、彼女はほぼロシア人の風体をしていた。
怖ろしくかわいい娘であった。
「決して嫁には出さんぞ」
頭のおかしい男(大和守のこと)はこの次女を溺愛している。
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