第42話 九州ほぼ統一さる

042 九州ほぼ統一さる


その事件は、あってはならない事件であった。

まだ、戦に突入していないにもかかわらず、抜刀して襲いかかるなど、何たる醜態、何たる恥。島津4兄弟以下、皆が土下座をして非礼をわびたのである。


そして、その苦い思い出から恭順の意思を見せたのである。

これにより、九州のほとんどが、鈴木家に従うこととなった。

豊後(現在の長崎県長崎市)の方面に、神の国の尖兵のみが立て籠もっている状態である。


博多に九州探題の御座所が新たに設置され、長官に柳生石舟斎が任じられる。

北九州の国々は、大友の旧家臣の上に、戸田勢源の戸田家がおかれた。

南九州は、島津の領地とされた。しかし、義久以外の3兄弟が鈴木家に仕えることになった。そして、島の権利の放棄を飲むことを条件とされたのである。


そして、種子島はキャンプ種子島と呼ばれるようになる。

そして、奄美大島も基地化(キャンプ奄美)され始めようとしている。


「まさか琉球を攻めるおつもりか」

「まさかとは、どういう意味か」

「いえ・・」

「儂はそもそも、日乃本など小さいと思っているのだ、世界へと出ていくは必定」

島津の4男の家久はこの言葉に見事に飲まれてしまう。

家久の心のうちでは、「このお方は大きい、儂などでは敵わぬ」と勝手に思い込んでそれ以後、心から従うようになる。

しかし、実際は違う。男の頭の構造がおかしいだけなのである。

時に真面目なものは、このような頭のおかしいものに驚かされて、支配を受けることが有るものなのである。


「道雪、屋久島の屋久杉で、戦艦を増産せよ」

「は」

「年代物は切ってはならんぞ」

「わかり申した」


既に、紀伊下津港、摂津国兵庫津、安芸国呉港で造船を行っている。

今度は、豊後佐世保港である。

あくまでも、何かに取り憑かれたように、こだわりをみせて行動する男だった。


「さて、次はあれだな」男は一人ごちる。

「あれとは何でしょうか」と家久は、すっかりこの男になついてしまった。

「うむ、九鬼義隆を呼べ」

「澄隆様ではなく、」

「そうだ、義隆にしか頼めん内容じゃ」

「は」


こうして、志摩国6万石の大名となった、九鬼義隆がキャンプ種子島に呼ばれることとなったのである。果たして、真珠大名(鈴木家では人知れず彼の事をそう呼んでいたものが多い)にどのような命が下るのか。


勇躍、九鬼義隆が旧型艦船を連ねて、やってくる。

さすが、九鬼水軍の者、真っ黒に日焼けした海賊である。

彼の内心では、「今度こそ、儂の出番じゃ、今までは、真珠養殖しかしておらなかったが、ついに戦場に呼ばれたのである。殿が儂の戦働きを期待しているのに違いない」こうなっていた。


種子島要塞内部。

「殿、久方ぶりにございます」

「うむ、義隆、息災か」

「は、殿の恩為に戦の訓練は抜かりなくやっておりましたぞ」

「うむ、御苦労。しかし、戦の訓練か、北畠の兵はきちんと守っていないのか」

そう、志摩国は北畠家の兵士が絶対防衛圏を構築し、難攻不落と化していたのである。


「いえ、そうではありませんが武士たるもの戦働きこそ本懐」

「そういう物か」

「はい!」


「そういうことならば、儂も安心じゃ」なんとなく話がかみ合っていないのだが、そこは無視するのがこの男流である。

「それで、次はどこの戦場で海戦を行うのですか」

「いや、お前には、もっと難しい作戦を行ってほしいのだ」


「何でしょうか、潜入工作とか」

「いや、そういえばそのような訓練はしておったのか?」

「勿論にございます。真珠養殖以外の時間は、鍛錬を怠っておりませんぞ」

「それは、素晴らしいな、まさに志摩海兵団とも呼ぶべきか」

「は!」


「ならば、なんの問題もあるまい、義隆、ひそかに」

「密かに」

「黒真珠の養殖を行うのだ!」

「は?」


かくして、奄美大島の秘匿湾で黒真珠の養殖が開始されることになったのである。

「拙者は!」

「義隆、黒真珠はな、真珠よりも大きいのだ」

「なんですと!」

「黒蝶貝はな、あこや貝よりもかなり大きいのじゃ、ゆえに真珠もおおきくすることができる、任せたぞ!」

「え?」


こうして、真珠大名は、黒真珠大名へと羽ばたき始めたのである。

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