第40話 『内城攻略演習』
040 『内城攻略演習』
内城は、海に近い。完全に戦艦の艦砲の砲撃圏内に入ってしまう。
薩摩の場合、商業圏にアクセスするためには、どうしても海路に頼らざるを得ない。
故に、城も海に近くなってしまうのである。
演習当日。
その海に、戦艦の艦影が現れる。
その数6。以前よりも2隻増えている。
そう、竣工したのである。
内城に籠る兵士は500人である。
高齢の者が多い。死ぬことも視野に入れて選ばれたのである。
まさに死兵となる覚悟である。
本来よりも最小限の数に絞られている。
演習開始のほら貝が鳴り響き、銅鑼が叩かれる。
手旗信号が、戦艦に攻撃開始を伝える。
既に、戦艦の大砲群は照準をあわせていた。
ド~ン、ド~ンと次々と発砲していく。
演習ということで、舷側7門が連続で火を噴く。
本当は、甲板上の砲塔も動かすところである。
第一斉射42発はほとんどが、模擬弾(只の鉄弾)である。
それでも、建物、石壁、土壁がはじけ飛ぶ。
弾が飛んでくる音は、兵士たちの心を砕くほどの恐怖を感じさせる。
艦隊司令官は、小早川隆景中将?である。
何故 中将!との声が上がったのだが、『艦隊司令は中将である。』
ある男がそういい張るので皆が、仕方なく黙ったのである。
「うむ、参謀、なかなかの集弾率だな」ほぼ、城内、城外周辺に着弾していた。
演習でも、この弾を浴びれば肉片と化し飛び散る運命である。
「はい、司令、訓練の成果が表れています」と艦隊参謀長の真田昌幸少将?である。
「後、2斉射後に、海兵師団を上陸させよ」
「は!」
戦艦の後方には、小早(船の呼称)が何隻も浮かんでおり、その船には、櫂を持った海兵隊員が上陸作戦開始の合図を待っている。
城から離れた場所には、島津の4兄弟の2人と家臣団と、鈴木家家臣団が演習を眺めていた。
高速で、砂浜に近づいてくる小早艇、全員が、迷彩職の軍服である。
肩には、小銃を担いでいる。腰にはさすがに日本刀を吊っている。
差すと邪魔なので、佩いているのである。
「あの奇妙な着物は何じゃ!」島津家の家臣が声を挙げてしまう。
上陸した海兵は2,000名である。
攻勢3倍の法則に則っても問題ない数字だが、城となれば数が少ないように思われた。
物凄い砲撃音はこちらにも届いていたが、城内の兵士ほどは当然聞こえていない。
城内の兵士はすでに顔面蒼白の状態だった。
「門を守れ!矢を放て!」
正門前ではまさに矢が放たれる。当たれば死亡、大けがである。
演習といっているが、まさに殺し合いは殺し合いなのだ。
だが、その矢は矢板によって阻まれる。
そして、小銃が城壁の漆喰を飛び散らす。
数発が狭間に吸い込まれると、守備兵がうめき声をあげて即死する。
「種子島を撃て!」
だが、島津の種子島では射程外であった。
攻撃側は、1町(100m)以上は向こうから精確に狭間に撃ち込んできたのだ。
「ようし、突撃隊、盾を用意して、突撃」
「は!」
それは、矢盾を重ね、間に鉄板を入れた防御用の道具であった。
それに守られながら、前進し、手りゅう弾を放り投げるのである。
「援護射撃!」
一斉に、小銃が火を噴く。
マルムシのようにうずくまりながら進む突撃隊。
そこに、火縄銃と矢が集中する。しかし、さすがに、それでは効果がなかった。
しかし、島津の猛攻撃が、マルムシの前進を阻む。
まだ、手りゅう弾投擲距離には達しない。
本来ならば、まだ艦砲射撃は続けるが、配慮して辞めているのである。
「何を、止まっている、行け!行け!」隊長が絶叫しているが、さすがに、板に食い込む銃弾が、鉄板に当たる音が激しいのである。
「あれを使え」
海兵師団長、島左近少将?が指示を出す。
「は、バズーカ砲をもってこい!」
これは、局地戦用に人間の力で持ち運べるサイズの青銅砲である。
人間は背負って発射しない。
筒自体は、適当に照準して、土の上に置いて、遠くから火をつける。
暴発する可能性があるためであった。
「照準は、稲富にやらせよ!」
「は!」
大砲使い稲富は今や、鈴木家でも大砲の大家となっていた。
彼は、息子のほうであった。
三角定規のようなものを使い、ざっと計算している。
彼の使っている筆は、鉛筆と後に呼ばれているものである。
彼は、その大砲の射程と落下パターンを把握しており、彼我の距離とから目標を狙っているのである。
「稲富、門の中央に当ててほしい」と島師団長がいう。
「そんな~、いつものさく裂弾なら、簡単でいいのに」と愚痴る。
今回は模擬弾、鉄の弾である。
念のために、5台のバズーカ砲が並べられる。
念入りに、しかし、素早く設置していく彼の部隊。
「照準完了」と兵士が稲富隊長に報告する。
「よし、発砲」
「発砲!」導火線に火がつけられる。
ドドドドド~ン。5発が連続的に発射される。
3発が、鉄と堅い木材の門に直撃する。
門を守っていた兵士が数人飛び散った。
「演習は終了せよ」その時、鈴木大和守は双眼鏡を下ろして命じる。
「演習終了!」
こうして、内城攻略演習は終わりを告げた。
「嫌、まだこれからであろう」
「中の兵士を
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