第38話 九州攻略作戦

038 九州攻略作戦


豊後臼杵城を簡単に抜いた鈴木軍は、九州内部へと侵攻していく。

圧倒的な、銃砲の破壊力と、騎馬隊の突撃力。

しかも、手りゅう弾などの爆発する武器は、今までこのようなものを見たことがない大友軍を席捲していく。(彼らと戦った者以外は皆知らない、知った者のほとんどは戦死している、生きている者は捕虜→奴隷となっている)


同時に、伊予、長門からも上陸軍が豊前、豊後の別方面に襲い掛かる。

毛利、小早川、吉川の毛利軍と長宗我部軍の援軍部隊である。


ふつうは、城で何日も粘られ救援を待たれるところだが、臼杵城の攻略部隊だけは、何もなきがごとく進んでいく。城すらなきがごとく落としていくのである。

長距離砲の攻撃力、近接戦闘では手りゅう弾、焼夷手榴弾、それに加えて、忍びの暗躍で、まさに、城の命も明日までかと、大友家家臣を慨嘆がいたんさせるほどの速度であった。

大友家にひそかに準備されていた『国崩し』は活躍する場所を与えられなかった。


大友家の家臣達が明らかな離反を起こし始めるまでに、そう時間はかからなかった。

北九州最大の商業区博多は、毛利軍に包囲占領された。


残存する大友家部隊は、肥前方面へと押し込められて行かざるを得なかった。

その方向しか逃げる方向がなかったからである。


そうしてやっと、大和守の軍は侵攻を停止するのであった。

彼らの目的は、大友家の殲滅ではなかった。

筑豊炭田地帯及び博多の掌握支配であった。

勿論、肥前(長崎の良港)支配をも行いたいところもあったが、兵站の維持も大変になろうという意見が支配的であった。

そもそも、次の攻撃目標、南九州攻略が控えている。

北九州で圧倒的な力を誇示することは、南九州に衝撃を与えるには十分だったことは言うまでもない。


大和守軍にすれば、九州自体も通過点に過ぎない。

本当は、種子島、屋久島、奄美大島、沖縄への兵站線の確保が本来の目的であった。

所謂、『飛び石作戦』である。


薩摩の島津家では、まさに皆が青くなっていた。

豊後臼杵城の戦いの様子は、恐怖をもって伝えられた。

薩摩・島津氏の居城、内城もほとんど海城に近かったからである。

錦江湾からの砲撃が確実に届く距離にあったのである。


やっと、薩摩を統一し、大隅、日向を自分の領地へとでき掛かっている、このタイミングでの敵襲。島津家にとっては歯噛みしたい心境であった。


そして、錦江湾に一隻の戦艦が現れる。高い3本マストが特徴のガレオン船である。

白い旗を振っている。

それは、交渉使節であることを伝えるために振っているのである。


小早が戦艦から降ろされて、それがこちらに向かってやってくる。

参謀総長戸次道雪を載せたものであった。


彼ら交渉団は、悠々と内城に迎えられた。

城内では、島津4兄弟が待っていた。


「この度は、話を聞いてくださりありがとうござる」かなり離れた場所に座った道雪が挨拶を始める。

多くの家臣が当主の島津義久まで並んでいる。

それだけ、恐れているのである。

それは全く正解である。

道雪は、彼らを殺そうと思えばできたのである。

土産ものの箱の底に、パイナップル型手りゅう弾が入っていたりするからである。

勿論そのような物を使う予定はない。

そもそも、決裂してもなんら問題はない。

ただ、ある男だけは、島津4兄弟を配下にできなければ最強家臣団ではないと落胆するだけである。

たったそれだけのことであった。

男の言に何よりも重きを置く道雪。しかし、だからといって、それが破綻したところで戦略上なんら影響を感じない。

道雪は、冷徹な判断のできる名将なのである。



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