第33話 戦国大名集結?

033 戦国大名集結?


1572年(元亀3年)、年が改まった正月、金鵄八咫烏で新年祝賀の大宴会が行われることになった。


大広間には相当数の者が招かれていた。

主な者は、鈴木大和守とその直参の家臣である。

ある者は、大名となり出世しての来城である。

狩野派の襖絵が広間を飾っている、一体全体どれほどの襖があるのだろう。どれも、今まで存続すれば国宝級の襖絵となるだろう。


200畳はあろうかという大広間に、膳と酒が並べられている。


訓練を施された女達が食事を運ぶ。

彼女らは、孤児たちのなれの果て。今は女中役を行っている。

基本的に、兵士である。


そこに、あろうことか全国から、戦国大名が集まっていた。

毛利家、長宗我部家、北畠家、九鬼家ぐらいなら同盟国としていてもおかしくはないだろうが。

織田信長がいた。しかし彼もまた義兄としてまだわかる。

武田信繁、彼は信玄の弟で影武者も務める。武田家重臣中の重臣である。

兄に代わってやってきたのである。そもそも、義信事件で信玄と義信は気まずい。

まあ、信玄自身も高齢で旅がきついため、代理を立てたのである。

彼らが来たのは、外交もあり、また義信の様子見。また、先ごろ国元から隠居と称していなくなった真田幸隆の様子見も兼ねている。しかもあろうことか、幸隆の次男が南近江の大名になったというではないか。

もっというと、鉄砲とその消耗品の買い付けも兼ねている。

忍びからの報告では、火縄銃とは隔世の感がある銃(火縄銃と称するライフル銃)が存在するらしい。何とか、義信や幸隆を通じて得られないか?という事情である。


上杉謙信がいた。彼は、前征夷大将軍足利義昭を預かっている。彼こそが、関東管領であった。今はどうなっているのか不明である。(管領は将軍に任じられた職なので解職されている?)

義昭の預かり時に、お土産をたくさんもらったのだが、今まで見たことのないような品物が多くあった。

それと、天皇からも出席するよう斡旋を受けていた。

実は、この広間の上の階で、御上も同じ食事を食べるために来ているという。

御上も食事などをことのほか楽しみにしている、と書かれた書状が送られてくれば出席しなければ、不敬にあたる。彼はそのように考える人なのである。

因みに、川中島の戦いの回数が少ないため、彼も信玄も信繁もまだ元気があったのである。

鈴木家と上杉家は『くそうず』の貿易国となる。

一体何に使っているのか?あんななんの役にも立たないものを。

キチンと役に立っている。主に火炎手りゅう弾などで使われている。一度燃えると非常に消火が困難なものとなっていた。


それ以外にも、一目この城を見ようと、大名本人ではなくとも、重臣が代理となってこの席に来ていた。彼らは、征夷大将軍の勢力下にはいないものなので気が楽といえば楽である。

ここの主人は西戎大将軍(近江より以西)を統括する将軍であると決められている。

彼ら東国武士には、関係がないといえばないのである。

大名自身が来ても、勢力下におかれたのではないのだと抗弁できるということである。


一方西国大名はそうはいかない。

ここに来れば、威勢に負けたと言われかねない。


しかし、一人大物がいた、大友宗麟である。

彼は北九州の雄、一番の大物であった。

彼は、ある野望をもってこの場にいる。


そして、鈴木家の戸次道雪、吉弘鎮理(後の高橋紹運にならない)は大友家の重臣の家柄である。来ていても関係性から何ら問題ないといえないこともない。


島津家からも、島津家久(4男)が来ていた。

彼は、本妻の子でないため、割と身軽といえる。

こういう招待は応じれば、威勢に負かされた。来なければ怪しからん!討伐じゃ!となる厄介な性質を併せ持つ。故に無碍に断るということも難しいのである。

その点、4男なら、ある程度相手側も自分側もたてたことになるのである。


そして、やはり種子島の事が気がかりであった。

そもそも、種子島に漂着してから、製作、大量生産までの期間が圧倒的に短いのである。

何故、紀伊でこのようなことが可能なのか!

島津家では常々問題になっていた。

答えは、男がだいたいの作り方を知っていたからである。

今現在、『技本』は大砲の閉鎖機の思考錯誤を重ねている。

駐退復座機の機構の開発も始まっている。

技本とは技術研究本部の略である。望月が指揮を執っている。

忍びの化学力と男の致死的な開発力が融合した、異次元の技術である。



多くの者は、その地位によって座る場所が前か後ろへと振り分けられている。

広間は段差が設けられており、上座から下座へと連なっている。






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