第32話 占領政策

032 占領政策


各地で敗残兵、孤児、浮浪者、反鈴木家の者たちがあつめられる。

そういうもの達は、すべて堺に集められ、淡路へと海路、送られる。

淡路で、どうしても反鈴木を捨てられないものは、奴隷として各地へと送り出される。

しかし、更生できるものは、兵士として再訓練を受けて、兵士として島を出ることが可能である。

島では、農業と馬の養殖がおこなわれているため、それに適合するものはそれでも可だった。


占領された地域では、はじめは不満が充満したが、その後2,3年で不満はすぐに解消されていった。農業に革命がもたらされ、収穫量が増えて、人々が少しだけ豊かになったからである。米の収穫は明らかに増え、しかも、気候的に寒い場所でもよく育つ稲を与えられたからである。しかも、地域に合いそうな副産物も生産され始めたからである。


冬になる前には、若狭も攻略が終わった。

もともと、若狭は武田氏が治めていたが、朝倉の後援を受けていた。

越前朝倉が臣従し、越前守護職は守られたので、若狭武田氏、単独ではほぼ戦えなかったのである。

彼らは、臣従することになる。

そして、若狭大名には、鈴木孫一が任命される。父重意も城の牢から出されて、その地に送られた。

今後一切、反旗を翻すことをせぬとして、起請文で八咫烏大神に誓約したのである。

中国との国境になる、姫路城には播磨大名となった滝川一益が、毛利を牽制する役目を仰せつかる。和泉は霜氏が治める。摂津、河内は、直轄領として重當の子、マキシムが治めることになった。

堺も直轄領である。


この年の夏、販売を開始された蚊取り線香は、畿内を席捲した。

煙たいが、蚊が死ぬのである。

これまでは、蚊帳で何とか蚊の攻撃を防いでいたのだが、蚊取り線香では、反転攻勢に転ずる。

辺り一面家の中の蚊を殺すのである。

蚊帳は高価だった。庶民には無理な価格、しかし蚊取り線香は、買うことができる値段に設定された。

しかし、数量は限定されたが。生産がまだ始まったばかりであり大量生産できなかった。

すでに、渦巻き型であった。これで長時間、蚊を撃退することが可能になったのである。


「己、義弟であるはずの重當めが仕掛けたのか!」

それは、信長の居城、稲葉山城である。

近江侵攻は簡単に成功しそうに見えた。そもそも、攻撃して見せろと誘ったのは、鈴木側である。あくまでも、牽制としてだが。

結局自分の都合で、勢力が薄い時を見計らったが。勿論占領した後に明け渡すことなど考えていない。


浅井、六角の主力は遠く、南山城であった。

逃げてくる、浅井、六角を討ち取れば、南近江は自分のものになるはずだった。

だが、武田軍が、美濃への侵攻を開始したため、撤退せざるを得ない状況になってしまった。

武田軍は戦国最強の呼び声も高い。今や、甲斐、信濃、遠江の三国を領する大大名である。


「はい、そのようです。こちらのラッパがその知らせを察知しております」

通知するにしても、何方面からも送らねばならない、そうしないと届かないのである。

その一部がとらえられたりする。


「どうしてくれようか!」激怒する信長。

もともと、呼応するように要請を受けたがそれを拒否したのは彼である。

「しかし、今や重當様の勢力は抗すべき相手ではございません」

すでに、畿内、近畿、中国、四国すら影響力を行使できるのである。

四国は、伊予、讃岐が小早川、土佐、阿波は長宗我部となっており、両家とも臣従を約束している。

毛利にとっては、長男の命の恩人。三男の嫁の斡旋を受け、子ができそうである。おまけに大名家となった。

長宗我部は、長男を人質にされている。

所謂息子にされている。立派な親衛隊にされるということだ。


結局どうしようもない。

すでに圧倒的に重當軍の方が数が多い。

しかも、このころの織田家では、鉄砲とその関係物資の入手に苦労している。

国友村すら、制圧されてしまった。堺からも購入が制限されている。


武田の方が、鈴木との交易で銃を手に入れているほどだ。

何故義理の兄を大切にしないのか!

そもそも、自分は親兄弟をあまり大事にしなかった信長である。


だが意外なことが起こるのである。

何と、新年の宴会に、金鵄八咫烏にやってくるようにと、招待状が送られてきたのである。


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