第26話 畿内の情勢

026 畿内の情勢


下克上が、摂津中心に起こっているころの状況であるが、播磨(姫路城周辺)には、鈴木重秀が一軍を率いていた。阿波、讃岐にも鈴木軍が張り付いていた。

だが、大殿の命を条件に、下克上の九十九軍に明け渡すことになる。

1571年の6月の頃である。

すでに、紀伊の全土で反抗勢力(本家勢力)は撃滅され、次々と領土を奪われていた。

本家の軍が、姫路に戻ると、四国には、真空地帯が生じ、今までいた土豪たちが次々と反撃に出る。

大阪には、大和、伊勢、淡路、摂津、紀伊から続々と兵力が集まってこようとしていた。

その中で、本家の家臣たちは、武装解除されながら、今まで与えられていた土地を取り上げられた。

確保できている領国では202万石に上る石高数になる巨大勢力に成長する。

このうち、九十九家が支配していた石高は精々20万石程度であった。

そのすべてが、九十九家となったのである。

そしてその石高数があれば徴兵能力は飛躍的に伸びる。

簡単に5万人程度は徴兵が可能な数字なのである。

今までは、それすらなくても、万単位の兵を養っていることを考えればどれほど非常識だったかということが明らかだろう。


だが、その数字は理論値であり、今現在すぐそこにといわれてもできることではない。

各地で紛争や土地替え、占領政策などが行われていたからである。

四国、播磨、和泉、摂津、河内などには、本家の者が数おおく存在しているため安定していないのが現状である。


今最も問題になっている土地は山城であった。

朝倉、六角を主力とする足利義昭軍が上洛しており、金鵄八咫烏城を攻め落とすべく準備していたが、その計画が一瞬に潰えたのである。本来は救援名目で城に入り、乗っ取る形にしようと考えていた。

重意も援軍を入城させる予定だったのであるが、軍の進行を阻んだ勢力があったのである。重意はその軍を入れ、九十九を牽制し、抑え込み、天下の副将軍となり、西日本を仕置きする気でいたのである。


西本願寺(東本願寺は造営中)の一向宗勢力は、鈴木大和守家の最大の友好勢力と任じている。

本願寺顕如は、その強力な鉄砲攻撃力で寺内(半分要塞化)から攻撃を開始したのである。

鉄砲は朝倉や浅井にもあった。近江大友の鉄砲であるが、雑賀鉄砲の射程と威力はその比ではなかった。しかも凶悪にも爆発する兵器すら持っていたのである。


これは、下間頼廉経由でこの西本願寺に運び込まれていた、柄付き手りゅう弾であった。

こうして、速やかな進行が阻害されている間に、金鵄八咫烏城が陥落するという悲報が飛び込んでくる。


六角氏はもともと気合の足りない性分であり、その悲報だけで腰が引ける。

朝倉、浅井はまだ気合が足りていたが。


伊勢方面から北畠軍が立つの一報が届く。

すでに、義父(九十九)に十分薫陶を受けた北畠友房である。

この凶報が六角の腰を砕いた。

伊勢方面、伊賀甲賀の軍が決起すれば、六角氏の領土は危機に陥るのだ。

大和方面では、松永、筒井家の連合軍が、やはり六角氏の領土を狙う。

そして、京都の天皇をはじめとする貴族も、九十九側のものが多かったのである。

京都の公家、貴族たちは、その多くが、九十九家発祥の趣味嗜好をたしなむものが多い。

それが、茶道、アフタヌーンティーなどである。

彼らは、お茶は、男山焼きの椀を愛用し、ティーは、ボーンチャイナの磁器を使用する。

もちろん堺でも売っている。しかし、彼から送られるものは、市販品よりも高度な技術の品である。いわゆる、コレクター垂涎の品となっていた。

しかも、堺の商人、納屋も丹波屋も知る人ぞ知る。九十九直系に近い店である。

へそを曲げられたら、これらすら買えないものなのである。もともと貴族には、財政余力はあまりなかったが。


紅茶は、この時、茶葉を発酵させて作るものであることは、秘密であった。

そして、クッキーはやはり砂糖がないと作れないのだが、これも極秘であった。

さらには、超貴重品の干し椎茸。これはまさに九十九家の専売特許であった。

未だに、椎茸栽培の方法は極秘である。紀伊山中で、ひそかに栽培されている。

周囲は、忍びと警察犬(紀州犬)が警戒しており、近づくと死ぬ。


堺に陸続と大砲や兵達が到着していた。

それは、キャンプ淡路の海兵隊だった。

その数2万。

一旦城替えで隠された、金鵄八咫烏の大砲たちも本土に帰ってきたのである。

一挙に、山城、近江を攻略し、丹波も落とす。

金鵄八咫烏城でも入りきれないほどの兵士たちが挙っていた。

毛利、小早川の応援も各5000が城外にそろっていた。

総勢5万。


少し頭がおかしい男の命令を今や遅しと待っているのである。

1571年8月の暑い日のことであった。

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