第24話 忍び
024 忍び
海兵隊特殊作戦軍。
彼らは、忍びの修行すらも行った精鋭中の精鋭である。
その彼らは、世闇に紛れて作戦を開始させようとしていた。
いかに、城塞といえども、たとえ難攻不落と呼ばれようとも、必ずいつかは落とされる。
そのために、城主は秘密の脱出口を用意しているものである。
そういうことが、真田幸村が逃げ延びたとか、秀頼が逃げ延びたとかの伝説になっていくのである。
そして、この金鵄八咫烏城にも当然ながらそれはあった。
城主。本来は城代だった男は、当然にそれを用意していた。
上町台地に沿って地下道が用意されていたのである。
当然元城主はそれを知っている。
そして、今の城主はそれを知らない。
特殊作戦軍の兵士は全員がライフルと拳銃を携行し、黒い野戦用の迷彩服にヘルメットにブーツを着用、ナイフ(これは脇差ともいう)などを所持している。
某町の井戸が入口であり、そこに兵士たちが懸垂降下で降りていく。
井戸の途中に扉がある、そこが脱出口の出口であった。
特製の鍵で其れは開錠した。
作戦軍の指揮は、藤林長門である。
彼こそは、伊賀忍びの上忍の一人、頭領でもある。
20名の黒い兵士たちが、井戸に消えていった。
戦自体は、まだ本格的に開始されていない。
攻め手は、例の土木作業を完了させ、いつものように宴会を楽しんでいる。
後は、大砲、バリスタ等の配備を完了させればいつでも総攻めを行うことができる。
そして、大砲は明日、この場所に着く。
バリスタは明日組み立てである。
守り手側は姫路城の孫一重秀が、毛利に牽制されており動けない状態になっている。
また、四国攻略中の軍勢も、九鬼水軍の助力をえることができず、本土に戻ることができない状態であった。
但し、京都には、重意を援護するため、浅井、朝倉、六角、延暦寺が軍を終結させたまでは良かったが、大阪方面に向かう途中に何と、本願寺勢の攻撃を受けて、前進を躊躇している有様であった。
尾張、美濃の織田は動かず。甲斐、信濃の武田も動かなかった。
イエズス会は布教に反対する鈴木重當を倒すために、足利将軍家に鉄砲などを供与したが、その性能は、雑賀銃の方が上だった。ゆえに、本願寺の戦いでは、撃ちまくられることになる。
しかし、その救援の遅れはすべての敗因になってしまう。
いや、救援の軍が来たところで結果は変わらなかったに違いない。
天守部分は完全にフリーの状態に置かれていた。
兵士たちは、前線を守るために外周にでている。まさか天守の地下や、井戸にそのような秘密の入り口が作られているなど夢にも考えていなかった。
音もなく、吹矢が巡回する兵士たちを殺していく。吹矢には、トリカブトの毒とそれ以外の毒が混ぜて塗られている。非常に殺傷能力が高い。救うすべはない。
兵士たちはそもそも、数は少ない。
天守には、重意や重臣の一家族らが住んでいた。戦を逃れるためである。
「誰だ貴様らは!」ついに発見される黒装束の男達。
しかし、それこそが、虐殺の引き金になってしまう。最小限の殺しで重意を逮捕するはずだったからである。
だが、騒ぎが大きくなると素早く処理を行う必要が発生してしまう。
そして、素早く処理するためには、刀と銃が遠慮なく使われることになってしまったのである。
「重意を早く探せ、逃がすな」藤林長門は冷酷な声で、特殊作戦軍の兵士に命じる。
「は!」
兵士たちは、拳銃を抜き、容赦なく殺傷し始める。
もともと、孤児だったもの達が多い。父であり救い主たる重當に対する忠誠心は尋常ではない。その重當に対して、この城の者たちは、自分で何もしないくせに、威張り倒して、父を紀伊に閉塞させた。
兵士たちは怒りを爆発させたのである。
藤林長門の知らぬところで、彼らは作戦を練っていた。その機会が今訪れた。
重意以外を一網打尽で、
一方的な殺戮が始まる。
「おい、重意を探せ!何をしている」
「閣下!重意を探しております、いましばらくお待ちください」
どう見ても、探すというよりも、追いかけて殺すことに注力しているように見える。
特に、重臣やその一門を発見すると完全に殺しにいっている。
天守の上にいるはずなのに、こいつらなにをしている。
藤林長門は焦りを感じる。
こいつらわざとやっている。
藤林は悟った。そして、自分は階上へと駆け上がっていく。
肝心の重意を逃がしては大問題である。
だが、その心配は杞憂に終わる。
「長門守様、遅かったですな」そこには、ロープで縛られた重意を転がしている加藤段蔵が待っていたからである。
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