第23話 下克上
023 下克上
紀伊を占拠した九十九重當家の兵力は、あっという間に、国内を平定し、いままで支配者だった国人、豪族を駆逐した。
鈴木本家にとっては、大阪の地を得たが、本願地を失ったということである。
重當はまず、キャンプ淡路に命令を発する。
海兵隊は、我が命に従えと。
勿論、彼らは、男を自分の親であり、頭領ということで教育されている。
九鬼澄隆は本家家臣ではあったが、もともと、男との付き合いの方が長い。
しかも、淡路、志摩に九鬼家を打ち立てさせてくれた張本人でもあった。
いわば恩人である。
本家から離脱、九十九重當家家臣として、使えることを受諾する。
大和の松永、筒井も同様に家臣となることを承服する。
伊勢・伊賀も同様であった。
畿内周辺の攻勢はすべて、重當により行われていたため、皆簡単に承服する。
それだけ、信頼もし恐れもしていた。彼らの戦闘を見たことがあれば、どうしてもそうならざるを得ないところもある。それだけ、異次元の戦いは脅威なのである。
これに、宗教勢力も従う。
仏教の守護者を
比叡山は従わなかった。
すでに、武装が解除されていたことも関係する。
一向宗は、非常に協力的であった。西本願寺を京都にたてさせてくれたことがやはり大きい。
帝、貴族の一部も男には、良い目を受けていたので、批判はなかった。
何よりも、真珠や椎茸、はちみつ、絹などが献上されるかどうかが関心事だったからである。
「鈴木重意は、重當に謝罪して、仏門に入るべし」
「鈴木重秀は、西戎大将軍を免じ、丹波、但馬を周旋するので、両国主となり、治めよ」
事実上の降伏勧告すら来る羽目になっていた。
しかも、丹波、但馬には、全く手つかずの敵勢力が存在していた。勝手に切り取れということだ。
1571年(元亀2年)
和泉山地を重當軍が超える。
和泉の地は、霜氏を中心に収めている土地であり、あっという間に、降伏したというか、重當蜂起を待っていたのである。
岸和田城は海上からの砲撃により降伏。
堺も自主開城。重當軍を受け入れた。何よりも、堺の生死はすでに握られていた。
絶対の忠誠なくば死すという誓紙を差し出さされたものが多くいたのである。
大和方面からも、松永、筒井の軍勢。興福寺僧兵、柳生、宝蔵院、伊賀、甲賀の兵たちが進出してきたのである。
金鵄八咫烏城は、意外はあっという間に占領されていった。
鈴木重意は、息子重秀(姫路城)と征夷大将軍足利義昭(京都)に救援を要請する。
だが、姫路城方面では、毛利軍が侵攻を開始し、攪乱工作を開始していた。
この作戦で重秀は完全に動けなくなっていた。
一方の足利軍は、朝倉、六角、浅井、比叡山により構成されていた。
「織田に援軍要請せよ!」義昭は、細川に命じて、美濃を攻略した、織田の援軍を要請した。
だが、織田の市は重秀、犬は重當の嫁として嫁いでいたのである。
「もし、織田が足利の援軍に向かわれることがあれば、武田が攻撃を開始するでしょう」
重當側の忍びがこのように告げに来る。
「織田が、足利に組みすることがあれば、南下してくだされ」信玄のもとにも当然忍びが行っている。
どちらにせよ戦場は混沌としていた。
誰が誰の味方になるのかということ次第では、風向きが大きく変わりそうであった。
しかし、一つだけ絶対的な事実が存在する。
重當軍は未だ、只の一度も負けたことがないということである。
そして、今回の戦いでも、抵抗らしい抵抗を受けることもなく、金鵄八咫烏城近くまで進出していたのである。
星形要塞の金鵄八咫烏城であるが、性質が銃砲による攻撃を前提としている。
そして、それは、火縄銃の銃砲ではない。
火縄銃では射程が短いのである。
鈴木重意は鉄砲隊には自信を持っていたが、この要塞の本質を理解していなかった。
堀の幅が大きいので、火縄銃ではカバーしきれないのである。
さらに、大砲が撤去されていた。
勿論訓練された兵がいないと運用できないが、それは重當の親衛隊にしか許されていなかったのであった。
つまり、防御力が不完全な状態であったのだ。
さらに問題があった。
重秀なら、知っていたかもしれないが、ここの城郭は飾りであり、本来は地下に潜むことで防御する。重意は、天守にいた。
天守とはそういうものだから、当然だが、この城の天守はあくまでダミーである。
ここを狙えという、標的なのだ。そして本当のターゲットは地下に潜み反撃の機会を狙うのである。
竹束、板、あるいは防御用の器材をもって続々と金鵄八咫烏が囲まれていく。
重意の鉄砲隊では、彼らを倒すことはできない。
射程が十分でないからである。
何事も、重當に任せていたことがここにきて裏目に出ようとしていた。
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