第17話 ロリ源氏
017 ロリ源氏
見事に出し抜かれて、小早川隆景に千代を奪われたと妄想している男の元には、年端もいかぬ幼女たちの姿があった。
それは、望月の娘(養女)として、男に嫁入りする予定の子供である。
参謀本部の作戦にまんまと騙されて、悪魔の契約をすました男である。
彼女らを粗末に扱うと、苦しんで死ぬことになるようだ。
子供たちは三人もいたが、その中でも、飛びぬけて美しい娘(幼女)が明智玉である。
「旦那さま」「旦那さま」とおままごとが大のお気に入りなり、男を惑わしていたのである。
「いや~、羨ましいですな」柳生石舟斎が言った。
「おい、坊主いつでも変わってやるぞ」
「いやいや、拙僧は、出家したばかりでござる、もはや嫁など貰うことはできません」
「くそ~」
「しかし殿、ロリ源氏とは一体どういう意味なのでしょうか」
「誰がそのような
「しかし、殿がそのように喜んでいるというと言うことは、大変にめでたいことでござる」
なぜなら、怒ると首が飛び天井が血まみれになるからである。
「望月であろう!望月!望月!」
「やはり、源氏物語からきているのですか」
「うるさいわ!」
「旦那さま、そのように怒られては、体に障りますよ」と妻役の玉が腹を撫でてくれる。
「玉、儂は怒ってはいないぞ」
「まあ、よかった。玉は旦那さまの笑顔が大好きです」
「儂もじゃぞ」
男も案外ままごとを楽しんでいたのである。
しかし、そのような夢の時間がいつまでも続くわけもない。
大事件が勃発するのである。
「紀伊沖に毛唐人の軍船が乱入し、事件となっております!急ぎ国元にお戻りくださいとのことでございます」
「なんだと!」
「言葉が通じず、一触即発の事態でございます、大殿は、毛唐の言葉に通じている大和守様の至急のお越しを命じられました」
「わかった。もめごとを起こさぬように、接待しておけ」
「はは」
紀伊、雑賀城は、岬に作られている。
その沖に、外国の軍船が来航したのだという。
言葉も通じず、一触即発の緊迫した事態なのだという。
男とその側近たちは、直ちに金鵄八咫烏城を出立する。
なぜなら、なぜか英語(この場合はそれすら理解できていなかったのだが)が理解できる人間がこの男しかいなかったからである。
・・・・・・・・・
紀伊雑賀城は今でいう片男波の近くの海岸に築城されている城である。
非常に陸からは攻めにくい場所であるが、海上からの砲撃を受ければ非常にもろい場所にある。
そして、英国軍艦には、大砲が積まれていた。
小舟で上陸してきた外国人は英語でまくしたてる。
勿論、内容がわかる人間などいるはずもないところだが、ここには英国人造船技師が来ていたので、何とか通訳をしていたのだが、なぜか真珠をよこせなどと通訳には意味不明の言葉が出てくるのである。
このころ、日本で活動している外国人は中国人などを除くとポルトガル人である。
所謂、イエズス会士たちである。
謎の世界分割協定(ローマ法王とスペイン、ポルトガルら)により、日本を支配できることになっているポルトガル宣教師たちが襲来していたのである。
しかし、男は、外国船の設計の為に、英国女王に真珠のネックレスを贈り、設計図と職人を得ることになった。ことの発端はこの真珠のネックレスである。
とんでもなく貴重なものであったので私掠船免状をもった英国人の海賊がやってきたのである。
そして、武力によりそれを奪取しようと、鈴木本家をほぼ脅しているという状態になっていたのである。
「この港がパールハーバーだろう。すぐに我らに、採取させろ!」
軍船の船長、フランチェスコ・ドレイク艦長が怒鳴った。
そんなはずもないであろう。
真珠は、和歌山下津港でとれるはずがない。
いや、探せば、少しはあるかもしれないが、そんな無駄なことをしてどうするつもりなのだろうか。
だが、この事件が発端となり、ここが、パールハーバーとよばれることになる。
所謂、ジパングとよく似た話の内容の妄想である。
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