第16話 土佐の戦い
016 土佐の戦い
せっかくの援軍である。あとのことはさておきこの援軍の力を借りて土佐を統一する。
長宗我部元親は当然そう考えた。ただし、大軍がこの国内に侵攻してきているため、うまく追い出さねば、自分が危うい。
小早川軍が伊予から2000の兵、そして、鈴木大和軍は、淡路から3000の兵で桂浜に上陸した。
長宗我部と安芸氏は永きに渡り戦ってきた。
今度こそ、決着をつけたい。
伊予軍は通常の兵だったが、淡路軍はまさに異形の軍だった。
奇妙ないでたちである。
そもそも、兜はかぶっているが、鎧はつけていないものがほとんどである。
皆、革でできた入れ物を担いでいる。
そして、大砲である。
見たことがないので、それが何であるかはわからなかったが、鉄砲のようなものだろうか?
武将は、若かった。彼らは、皆、例の息子なのであるという。
皆長身であり、土佐の人間よりも頭一つ以上は抜けている。
彼らの護衛の為に、巨人二人がいた。
何という大きさ、彼らは力士に違いない。
当初、息子たちの出陣に大和守は渋った。
他人の子といえど、きちんと愛情を注いで立派な武将に育ててきたのだ、危険な目に合わせたくなかったのである。最強軍団を作るためにやっていたことだが、それはゲーム上でのこと、実際育てていれば、愛情が湧き、我が子も同じである。
絶対に無理をするなといいつけているが、そもそも、そういうことを聴く質の人間が猛将になるはずもない。
そこで、護衛として、自分の護衛役の真柄兄弟や服部半蔵(正行)、島左近、可児才蔵などを連れて行かせることにしたのである。
統括は、竹中重門が取り仕切るが、まずは、参謀部の真田昌幸が作戦を立てる。
実戦部隊に、吉弘鎮理、本多忠勝、榊原康正、マキシム重牧(実子)、稲富 祐直(すけなお)などがいた。
所謂、若い者にやらせてみよである。
その他に、最近仲間に加わった、武田義信→鈴木重信、飯富虎昌→山県重昌、尼子の一党が観戦武官として参加している。鈴木の戦い方を学ぶためである。彼ら(武田)は日ごろ馬の繁殖のため尽力しているが、今回はその出番はない。
安芸氏は安芸城への籠城を選択した。
兵力が圧倒的に不利だからである。
だが、その安芸城はそれほど防御力のある城ではなかったのだが。
海兵隊の兵員はすでに戦い方を心得ている。
適切な場所に突撃を防ぐ柵を作り始める。
そして、城を狙いやすい場所を整地する。
稲富祐直はそれを命令するでもなく見守っている。
作戦会議では、まずは、鈴木方が砲撃を開始、城に被害が出たら、長宗我部、小早川軍が突入する。正面の門は、爆破される予定である。
何とも簡単な作戦である。
しかし、狙撃部隊は、夜のうちにギリースーツを着込み、夜明けの攻撃に備えて、匍匐前進で、城を射程内に収める場所まで進むのである。ばれないように。さすがに草むらの数まで勘定している者はいない。
夜が明ければ、鉄砲隊が柵の後方で射撃体勢を整える。
「撃ち~方はじめ!」稲富祐直の声が戦を始める。
その声に反応して、旗が振られる、射撃開始の旗である。
轟音が次々とさく裂する。
旧式の青銅砲だが、その音と衝撃力は脅威である。
長宗我部軍は何事かと驚愕した。
今までに聞いたこともない轟音だった。
20発の鉄の玉が、城を襲う。
「第2斉射準備!」稲富の命令は容赦ない。
城の中では、玉の直撃を受けた兵士がいた。飛び散った。
石垣が飛び散り、破片で負傷者が多数発生。
土壁の土が吹き上がった。
小さな城なので、兵士が充満していたのである。
第2斉射、第3斉射、次々と大砲が火を噴く。
しかし、敵軍はそれ以外に何もしない。
突撃命令は、真田昌幸が握っていたが、彼は、そもそも、突撃すること自体が無駄だと考えていた。さく裂弾なら簡単に燻りだせるものをと考えてすらいた。
今回の戦いでは、伏せられている。
第5斉射が行われる。
城内には、相当の死傷者が発生していた。
「昌幸、なぜ突撃を命じない!」そこでやっと康正が声を発した。
「無駄に兵を死なすものではない」
「だが、それでは手柄を立てられんだろう」
「後2発斉射させる、そのあと、突撃を命じる」
「わかった」
彼らは、兄弟のようなものだ。そのように育てられた。
「竹束を盾にして突撃せよ!」
すでに、鉄砲対策が取られた海兵隊の突撃が始まる。
「支援射撃をおこなえ、味方を討つなよ」
「バリスタでさく裂弾を撃ち込め」
城内では、ほぼ戦意が駄々下がりの中、竹筒がさく裂する。
それは、まさに精密狙撃であった。
大門の方で爆発が次々と起こる。
手りゅう弾である。
壁の中でも爆発が起こり始める。
壁にとりついた兵士が投げ込んでくるからである。
「門を吹き飛ばせ!」
ドド~ン!
たる爆弾が門を破壊する。
もはや、こうなると止めるものは何もない。
「迎え撃て!」
バババン!ライフル銃で撃ちぬかれる防衛隊の武将。
「突撃!」それは銃剣突撃である。
後方式ライフルでは、銃剣を着剣することが可能になる。
海兵隊では、銃剣術の訓練も当然行われている。
怖しいほどの攻撃力。
対処法はあるのか、今すぐに思いつくことはできない。
少なくとも、こちらも大砲を用意する必要がある。
小早川隆景、長宗我部元親の両名は、遠くから観戦しながらうなるしかなかった。
一方、観戦武官としてやってきていた、武田一党、尼子一党は、すでに後がなくなった。
ここで、精鋭になるしか生きる道がないのである。
だが、それこそ武将の血がたぎるのも感じてもいる。
彼らは、自らを死地に追い込んで生きる武士だからである。
長宗我部元親は息子千雄丸(のちの盛親)を人質として、キャンプ淡路へと送り出すことにしたという。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
この狂暴な虎の戦法を手に入れる必要があったのだ。
そして、もう一人、この戦いを見ていた男が一人。
「儂も大名にしてくれるのかのう」吉川元春が、こうつぶやいたという。
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