第14話 伊予の国の戦い2
014 伊予の国の戦い2
朝は、二日酔いの兵が多い。
こんなことで大丈夫なのか?
酒のアルコール度数を上げているためにそんなことが発生する。
「馬鹿者どもが!何を飲み過ぎているのか!」いつもは紳士然としている明智光秀が激昂して、怒鳴り散らす。
「毛利の兵に笑われるではないか!」
だが、実際にはすでに戦争は始まっていた。
狙撃部隊は、陽の上る前から、全身網をかぶって戦場を前進している。
彼らはすでに、叢になり潜伏している。
青銅砲(小口径)の隊長は、近ごろ大和守家に仕え始めた本願寺坊官下間頼廉だった。
彼は、すっかり鉄砲の世界に魅せられて、本願寺との橋渡し役として、大和守に使えることにしたが、まずは、近ごろ足りなくなってきた大砲屋に配属された。
「何とかして、狙撃部隊に入りたい!」彼の野望はそこにある。
銃を使いたいのだ。しかし、それには、部隊長を誰かに押し付ける必要があった。
誰か親族か家族をだまして、部隊長にさせよう。頼廉は筆を執ったのである。
親族をだますために。
城からは、そのような怒り狂う敵将の声が聞こえる。
聞こえるようにやっているからである。
いきなり、柵を作りまくった敵に動揺したが、案外大したことはないのだ。
恐らく士気が低いに違いない。
こんな、ところまで戦に来るのだから当然であろう。
「某が一当てして、敵の士気を図りましょう」
「いいや、某が」そこには、この戦いでの、イニシアティブをとろうとする戦いが発生していた。
「しかし、我等は籠城を選択したのだぞ」
「敵の軍ですが、士気は低そうです」
「某が参りましょう」西園寺何某が強硬に言い張る。
そもそも、連合軍だが、もともとは敵であったりする。
門が開いて、西園寺軍500が吶喊を開始する。
「敵襲!敵襲!」
小早川軍はすぐに、大慌てを始める。
「迎撃せよ、迎撃せよ」
「うわ~」
「敵は混乱状態です」物見からの報告で、一条何某も出陣する。
混乱しているのはすべて柵の向こう側である。
「頼廉!」
単眼鏡を覗いていた、光秀が命じる。
「てえ~」
ドンドンドン、小型砲が火を噴く。
ヒュルヒュル嫌な音だった。ドカ~ン。
まさに、射撃目標位置に着弾する。
西園寺軍は全く何が起こったのかわからなかった。
周囲が吹き飛ばされたのである。
彼らは、初めてさく裂弾の洗礼を浴びたのである。
10発程度の射撃だったが、周囲は黒煙と砂煙に包まれた。
完全に行き足を止められてしまい、しかも呆然としていたのである。
その時、柵の後ろには、鈴木軍の鉄砲隊が列を成していた。
「撃て~い」
壮烈な発砲炎が起こり、行き足の止まった西園寺軍に鉛弾を食らわせる。
「次弾撃て~い」
ババッババ、黒色火薬ではないため黒煙は少ない。このころ、黒色火薬から、ニトロセルロース火薬に変換されつつある。
所謂無煙火薬の走りである。
望月出雲の化学研究所が開発に成功していたのだが、量産化が始まっていたのである。
しかし、大変危険なため、死者が多数であるのである。
工場には、奴隷が当てられる。
100人の射手が3回撃てば300発である。
辺りには、死傷者が満ちていた。
西園寺何某も戦死していた。
それを見た一条何某は直ちに退却を開始するが、そこには、叢が複数存在していたのである。
叢から一斉に発射炎が起こる。
一発目は一条何某を即死させた。
明らかに狙われていたのである。
その一撃で一条隊は完全に瓦解した。
城の兵士の3分の1が無謀な突撃で消滅した。
たった半時(一時間)で壊滅した。
逃げる兵士たちは、城に戻ろうとしたが、狙撃に合うだけだった。
小早川隊が彼らを囲いこんで覆滅する。
城内では、大混乱が発生していた。
「あれはなんだ!」
残念ながら四国にはまだ大砲は来ていない。
初見である。
しかもさく裂弾は鈴木家の特許商品であった。
どこでも作っていないし売ってもいないものである。
柵が前進してくる。
城の周囲を囲うのである。
柵は、銃兵に守られながら作られていく。
そして、柵ができれば、大砲とバリスタが前進してくる。
塀の上に上った兵士が強弓を放つ。
かなりの飛距離が出る。
しかし、その弓の武者は、狙撃される。
すでに、弓の射程の外から狙撃が可能なのだった。
そして、矢が届いても、矢盾で簡単に防いでしまうのである。
「降伏勧告の使者です」
「降伏せよ、小早川の傘下になることが条件である」
使者が宣言して下がっていく。
「儂は悪い夢でも見ているのか?何が起こっているのだ」
城主の宇都宮何某は、すでに半分魂が抜けたようになっていた。
悪夢なら覚めるが、悪魔は消えてなくなることはないのだった。
この後、宇都宮何某は籠城を決意するが、城の内部に大砲を数発撃ち込まれて、降伏してしまう。
そして、悪名高い悪魔の契約書に署名させられてしまった。
いともたやすく、大洲城は陥落し、その日のうちから改築工事が始まる。
それは、土佐の封じ込め作戦のためであった。
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