第12話 工作

012 工作


そして、説得工作が始まる。

そもそも、尼子勝久は、すでに鈴木の養子となった。

じゃあ、鈴木勝久だろ。と思うが、わかりにくいので尼子と呼ぶ。

すでに、鈴木が相当数いるので、お許し願いたい。


そして、鈴木と毛利とは、ほぼ同盟条件が確定している。

尼子の仇は、取ることはできないし、無意味に争うことになる。

争う場合は、鈴木が責任をもって、尼子を滅ぼすとのことだった。


「しかし、我等の力を結集すれば、そう簡単にやらせはせん」立原がいきり立つ。

「そうかな、しかし、戦いは数だよ立原殿。我等の力は先ほどの戦いでしめしたはず」

「あれは個の戦い、戦は個で戦うものではござらぬ」と賢い、山中。

しかし、これは出来レースに過ぎない。

「では、我等の強さを見せて進ぜよう」結論は論より証拠を示すことだった。


キャンプ淡路へと移動。

だが、この時、彼らの心はすでに折れかけていた。

兵の質が異常に高いこと。これは少し一緒に過ごせば嫌でも感じずにはいられない。

そして、水軍。九鬼水軍の軍艦は、これまた見たことのない大きさのものだった。

さらには、鉄砲。とにかく至るところにある。

一人で三丁を撃つのだという。

明らかに、経済力が大きく違うのだろう。

そして、食事。

美味い!泣くくらいにうまい。

しかも、一部の人間だけが食っているわけではない。

多少の差は有れども、皆が食うに困らず同じようなものを食べている。

山中は、食事中に抜け出して、探っていたのだ。

さらに、忍びがついてきていたが、それも脅威だ。


そして、キャンプ淡路での実戦さながらの訓練。

大砲が火を噴く。鉄砲が火を噴く。

そして、いつの間にか近寄ってきた兵士が狙撃を披露する。

そのあとは格闘戦、模擬剣術戦闘、槍、弓矢。

彼らは、農民ではない!

まさに職業軍人なのだ。


「まあ、100万石とはいかぬが、皆子供にいうておるが、万石の大名には必ずするので、仕えてやってくれぬか」

「立原、山中頼む」子供の主人に言われると、もうどうしようもなかった。彼らはまた三人で泣いた。


「しかし、大殿には、すでに相当数の子がおられるわけですが、うちの殿は後から来たのですが大丈夫なのですか」

「立原よ心配するな、ちゃんと当てはある。手筈が整い次第やっていく」

男は何らかの自信を持っているようだった。


・・・・・

だが、参謀本部の中では、異論があった。

万石を約束したものでも相当数に上る。早く、適当な場所を見つける必要がある。

中国は毛利だとすると、後は、四国、これはすでに阿波は本家、伊予は小早川が取る予定、さらには、讃岐を本家が攻略中、残りは土佐のみ、近畿では、畿内でない、丹波、丹後、播磨、備中、美作くらいしか残っていない。(敵の数の割に、収益の見込みづらい土地ということになる)

勿論そこにも戦国大名がおり、国人衆もいる。

小さな城がひしめくような土地が多い。さらに言うと、取ったからといって、すべて自分の采配で決めることもできないのである。

そんなことをすれば、必ず鈴木本家が文句を言ってくることだろう。

「これは、殿を交え話し合うべき議題である」戸次参謀長が最後に締めくくる。


だが、土地はなくとも銭は莫大にあったので、給料の支払いはほとんどが銭によって行われている。ゆえに、皆困ってはいなかった。どちらかというと、ついてきた庶民たちが、何をしていいいかわからず、困っていたのである。


そのためにも、石見銀山を譲りうける必要があったのでもあるが。


その手筈を整えるためにも、小早川水軍が必要だったのである。

キャンプ淡路から、戦艦部隊が、ひそかに出港し、安芸へと向かう。

ついに戦雲が、四国に迫っていた。

いや、四国ではすでに、鈴木本家が三好と戦っていた。


戦艦部隊は、瀬戸内の島々を砲撃、次々と降伏させていく。

そもそも、小早川水軍に従属しているものが多いのだが三好の残党や毛利の配下をよしとしない島や海賊がいたのである。


そのあと、現代の松山市の砂浜に上陸する。

伊予国湯築城では、毛利方の河野一族が応対する。

宇都宮氏、西園寺氏、土佐一条氏などを葬りさることを宣言する。

今回は強力な打撃群が、小早川軍を支援していた。

残念ながら、海上輸送が多いため、大砲や馬が少なかった。

馬は特に持ってこなかった。

死んだら大変だからである。

大砲は、大口径ではなくて、人の手でも持ち運べる口径の物が選ばれた。

宇都宮氏の大須城は山の中だ。

大鉄砲と呼ばれるようなものである。

だが、大鉄砲すら後送式であった。

イメージとしては、迫撃砲辺りであろうか、勿論曲射砲ではないが。

そして、その助っ人たちの格好は、すでに侍でも足軽でもなかったのである。

まさにアーミーだった。

武器は、刀槍などを持ってはいたが。




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