第9話 坊官
009 坊官
その男は、京にいた。
まさに、招かれざる男は、京にいたのだ。
この前は、西本願寺建設に絡んで建設現場周辺での銃撃戦と比叡山の山門を次々と破壊した。
男は、建設現場を視察していた。
西本願寺はかなり建造が進んでいる。
しかし、後から発想された、東本願寺はまだ縄張り中である。
「この前は助けていただきまして、ありがとうございます」
礼を述べる男は坊官、下間頼廉であった。
「なかなかに、叡山の坊主も気性が激しいですな」と男。
勿論、一向宗の坊主も激しいのだが・・・。
「はい、しかし、鈴木家の鉄砲の威力はまともと思えません」
一見すると、悪口を言われているようにも聞こえる。
「某も、鉄砲撃ちの端くれとしてぜひとも、雑賀鉄砲をお譲り願えないでしょうか」
「堺の納屋で売っておりますぞ」と男。
「いえ、そうではなく皆さまが使っておられた物がいただきたいのです」と下間。
「そういわれましてもな」と男。何と嘘をついてごまかそうか?
確かにそういわれても、すでに数段階に分化していてわからなかったのも確かである。
一般の売り物の火縄銃。
撃ちやすいように改良された銃兵用の銃。
そして、狙撃兵の持つ後送式ライフル銃。
さらに、スコープや銃剣などのオプション。
「それに、あれは、軍機(軍事機密)につきお教えできかねるのです」
「某は、顕如さまと重當様の間を取り持つために、重當様の配下となる覚悟がございます」と坊官は気色ばむ。
「ええ?」
鈴木銃勇士のメンバーはもう埋まっているのに?十人が定員なのに!
取り持つといわれても、今後は京都で静かに
「ですが、万が一、我等と本願寺が・・・」と男が述べようとすると。
「とても残念なことですが、某がそれを防いで見せます」と坊官。
どうも、銃に非常な執着を持っているようだ。
「しかし、京での警護も必要でしょう」
「はい、猊下には、我が一門の別の者たちもいます」下間家には、まだまだ下間が居る。
「そうですか、では、我等の一員になる心構えありということなら、この八咫烏起請文に血判していただきますが」
男の側近たちが、二歩ほど後ろに下がったのだが、銃を持ちたい一心の頼廉は気づかなかった。それが非常に危険であるから側近がその言葉に反応したのだが・・・。
こうして、また一人、九十九軍に武将(犠牲者)が参加することになる。
大阪左右の将の一人、下間頼廉その人であった。
ただし、この世界では、石山攻めが起こりそうもないので、そう呼ばれることはなさそうだった。
その時、牛車が到着した。
「おお、
「これは、これは山科様、よくぞ願いを聞き届け下さりありがとう存じます」
「無論、そなたの願いであれば、
金を包んでいるので、山科氏はすぐに来てくれたのである。
山科と下間らが挨拶を終えるのを待つ。
「それにしても、本願寺の坊官が、蔵人殿の配下とは、妙な取り合わせでおじゃるな」
「そうでおじゃるな」と男が返す。
真似するなと、道雪が首を振っている。
「それで、何故寺を見たいなどと言い出したのじゃ」
「はい、今回は東福寺を拝見したいと思いまして
「そなたは、本当に仏教の守護者を目指しておられるのかの」
「畏れ多いことでございます」
「それにして、叡山を焼き討ちしておったようじゃが・・・」
「あくまでも防衛のためでございました」
「しかし、叡山まで追い立てて、山門を焼き払ったと聞くが・・・」
あくまでも、焼いたのではなく爆破したのである。
その後焼け落ちたのかもしれないがな。
「少し、懲らしめてやらないといけません、おかみのおわす京を騒がしたのでございますゆえ」
「そうか、それはよい心がけじゃ、おかみに伝えておきましょうぞ」
「はは、有難き幸せ」つまり、おかみにも金を出せと言われていることに注意が必要である。
京都には、こういうところがあるので、田舎者は充分注意する必要があるのである。
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