第4話 本願寺

004 本願寺


京の街に凄まじい爆音がとどろく事件が発生した。

衝撃波が各所で観測されたという。

それは、工事現場で発生したものである。

第100工兵師団は、京都の町で破壊活動を行っていたのではない。

本願寺建設現場で掘りを作るために、発破を仕掛けていたのである。

ただ、許可を受けていない発破であったため、御所から衛兵隊が派遣された。

勿論この時代に、そのような許可はないし、申請する場所もない。

厳重注意を受けた、工兵師団だが、爆薬の量を減らして、またも爆破を続けるという暴挙に出る。


山科氏が直ちに、金鵄八咫烏城へと派遣され、この一連の爆破事件の説明を求められる。

ほとんど、掘割の事業区画は終わっていたので、大変すみませんでした。とお詫びを述べ、干し椎茸と金を土産に渡すと、山科氏は喜んで帰っていった。


だが、この事件を聞きつけた、某寺では大変な騒動に発展していた。

この寺の建設は、天皇が勅許を与えているとのこと。これは我らをないがしろにしたも当然である。そもそも、本願寺は京都にいたのだが、そこを襲われて、京から出ていく羽目になったのである。それが、山科本願寺である。

今また性懲りもなく京に寺を作るなど、許されるはずがない!

僧兵たちは、出撃準備を開始するのであった。


「わっしょい、わっしょい」神輿を担いで山を下りる僧兵、「焼き払え、焼き払え、本願寺」「わっしょい、わっしょい」

なぜこのような思考になるのかは、不明だが、事実僧兵が京の町に侵入する。


歴史に忠実に再現するため、本願寺は現在の堀川七条に建造される計画だった。

縄張りも、建設も勝手に請け負い、建築を行う第100工兵師団。

勝手に仕事を始めると、建設費を鷺ノ森別院あてに、請求する。

これが、あの男流の仕事術。

あわてて、建設指揮のため、坊官下間頼廉が派遣される。

だが、顕如は怒るどころか、逆に大変な感謝をしめしたのだという。

本当に、鈴木が約束を守り、石山の代わりに、京で寺を建ててくれるというのだから。

約束は破るためにある、まるで某国のような状況が戦国時代なのだ。


そのころ、男はちょうど、京にいた。

そして、その強訴の部隊と遭遇することになる。

すでに、掘り(空堀)は掘られており、今は、セメントで固めようかとしていたころである。

壁と櫓も一応できており、戦闘行動が可能なようにはなっていた。


「本願寺は焼き払え!」坊主どもが叫んでいる。

だが、彼らは僧形をしているだけで本当の坊主ではない。

僧兵である。

〇暦寺の威光をしろ示すために、京の町に侵攻してきたのである。

その数は数百。

手に手になぎなたや弓を持っている。

工兵師団は、工兵であるが、戦闘訓練も積んでいる。

激戦地で、何かを構築する場合も考えられるからであった。

そして、今回はまさに、激戦地になろうとしていた。


「待ちたまえ!僧兵諸君。私は、西戎将軍(鎮西将軍)の鈴木大和守である。この建築はおかみの認めたもうたものである。」メガホンを使い、堀の向こう側の僧兵に声をかける。

「黙れ!京に本願寺は無用じゃ」

「そちらこそ、黙れ!帝の命であるぞ、下がれ」

「打ち払うのじゃ!」

「もう一度いう、警告である、解散し、お山に帰れ、直ちに武装を解除し、山に帰れ」

「撃て!」弓矢が無差別に発射される。

「これは、防衛行動である、反撃を開始する」


掘りの前には、対人地雷クレイモアがいくつも準備されていた。

まさか、〇暦寺が攻めてくるとは考えていなかったが。

数発の弾丸がクレイモアの起爆装置を打ち抜く。

ドカ~ン!ドカ~ン!次々と鉄球をばら撒くクレイモア。

次々と血まみれの被害者と死体を作り上げていく。

集団行動のため、被害甚大である。


「狙撃せよ!」

「撃ち~方はじめ!」

バンバンバン、とてつもない轟音を響かせて、鉄砲の射撃が開始される。

そもそも、十数メートルしか離れていない近接射撃であった。

彼らにとっては外す方が難しいのだ。

瞬く間に、死体の山ができる。


京の町には、二条城修築の護衛のために、鉄砲部隊が存在した。

その部隊が直ちに、救援に駆けつけてくる。


「戦闘準備をおこなえ、〇叡山を攻撃する、これは防衛行動である。御所にも馬を出せ」

すっかり、大事になってしまった。

なんで、関係のない寺が攻撃してくるのか?

理解はできないが、攻撃されれば報復する、これがこの男の行動原理の一つでもある。


「簡単には、攻撃できない場所ですぞ」戸次。

〇叡山は要衝である。

「突破して見せよ!」

「は!」戸次


こうして、さらに大事へと発展していく。

忍び部隊が先行し、爆薬を仕掛け、門を破壊の準備をしていく。

その後、銃撃、武士の突撃の順に決定する。


3日後、山城の国人部隊の兵が集められる。

突撃させられる部隊である。

稲富の青銅砲部隊、工兵隊のバリスタ、鉄砲隊も招集される。

まるで、信長の〇叡山焼き討ち事件の様相を呈し始める。


山門には、僧兵が集まり、防御を固めている。

砲兵とバリスタ兵が、準備を開始する。

山の中を、重い大砲を引いてきたのである。

山城国人達も興味津々である。


「て~」

バババ~ン!鉄の弾が門に直撃し貫通する。

さく裂弾は使っていない。

山門周辺は木片が飛び散り、大きなダメージを受ける。

「降伏せよ!」兵を率いる、滝川一益がメガホンで呼びかける。

「門は破られておらぬわ」

「よし、旗を振れ」

一益が副官に命令すると、旗が振られる。

すると、山門が大爆発を起こす。すでに、爆弾が仕掛けられていたのである。

「うわ~」

僧兵らが、次の山門まで必死に逃げる。

だが、すでに、その山門では、壁の高さがそれほどない。

次々と兵士が、手りゅう弾を壁越しに投げ込めば、まさに大混乱が発生する。

「うわ~」僧兵たちは血まみれになりながら、後退する。

次の山門が、爆発する。

「うわ~」

あっという間に包囲される僧兵たち。

「死にたい奴は前にでろ」


こうして、〇叡山は焼け落ちる前に降伏した。


〇台座主が御所に召喚される。

「此度の狼藉ろうぜきは許し難し、本来なれば、末寺に至るまで棄却せんところを、おかみのご厚意と鈴木殿の寛容により、酌量されたのである」

「はは」

「詫び料として、東本願寺の増築費用を〇叡山が肩代わりすること、以後洛中で暴れることのなきように」

公家の近衛何某が、沙汰を言い渡す。


「殿、東本願寺とは何でしょうか?」

「うむ、そういえば儂は、本願寺と呼んでいたがの、本来は東西本願寺があるのが正しい姿なのじゃ。」

「え?」と戸次。

「儂がいうておった本願寺は、所謂いわゆる西本願寺であったのじゃ。すっかり東本願寺を忘れておった。この戦いのさなかに、思い出したのじゃ。これでは顕如殿に申し訳ないと、ちょうどよいところに金を出しそうなやつが出てきてくれたのじゃ。これは、使うしかあるまいて」「さすがは、殿にございます」なんでも肯定する戸次。

「そうであろう」と自慢げな男。

「ですが、なぜ東西があるのでしょうか?顕如殿はどちらに行かれるのでしょうか?」

「道雪、それは、顕如殿が考えればよい、儂はおそらく西ではないかと踏んでいる、西方浄土というくらいだからな」

「そうなのですか」

「うむ、本願寺とは、東西を同じように作らぬといかんのじゃ」寺の塔か何かと勘違いしている男だった。

「わかりました、そのように、致しましょう」

「頼む」


こうして、京の町になぜか、西と東本願寺が作られる。

造営費用は、他人持ちなので気にする男ではなかった。


持ち主になる顕如は大変不信に感じたが、片一方の費用で済み、〇暦寺を懲らしめてくれたので大満足だった。

こうして、京の町に東西本願寺ができ、ここに相当な兵力を蓄えることになる。


二条城と本願寺に防衛線が構築されたのである。




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