第27話 死なずの王
「なっ!?」
言うまでも、何が起こったのかを確認するまでもなく、俺たちはすぐさまその場から離れる。
「うそでしょ!? これだけの魔法を喰らっておきながら……」
エリシアは驚愕の声を漏らすが、しかし現実は目前に無情にも立ちはだかる。
指を砕かれた巨人の腕は、一つが崩れると文字通り魔法が溶けたように崩れ落ちていき、バラバラと神殿が崩れながらもあたりに瓦礫が散乱し。
【AAAAAAAAAAAAAA】
その瓦礫を押しのけ……剣を握り立ち上がるそれは言うまでもないだろう……ボロボロで全身がおかしな方向にひしゃげているが、それは紛れもなく、ハイアンデッドであった。
「あんなになってもまだ動くなんて!」
「どうなってんだ!? あいつ、レッドドラゴンよりもタフだってことか?」
「そんなはずはありません! ステータスの数字はそのまま反映をされますから……ハイアンデッドは14、レッドドラゴンは確かに22です……どう考えてもあのハイアンデッドがエリシアさんの魔法でやられない理由がありません!」
「じゃあなんだって……」
理由が分からず、俺はステータスの魔法によりハイアンデッドのステータスを再度確認すると。
「えっ!?」
ステータスを共有してるミユキが、不意に驚いたような声を漏らす。
「どうした?」
「スキル、ガッツの発動を検知?」
「ガッツ?」
慌てて俺もミユキと同じようにステータス画面を確認すると、確かにハイアンデッドのステータス画面に【スキル・ガッツ発動】と書かれていた。
「致死のダメージを受けたときに、生命力をわずかだけ残して耐えるという特殊スキルです!」
「はぁ!?」
「さらにガッツは体力が最大回復すると同時に使用可能になりまして……」
「つまり?」
「常に傷を修復する特殊能力を持つハイアンデッドがこれを所有していると、もはや手が付けられません!」
「なんだとぅー!?」
「ちょっ!? どういうことよ二人とも! 私にも分かるように三行で言うとどうなるの!」
「やべえ、あいつ、倒せない!」
「大変じゃない!」
エリシアはそう叫ぶと、再度アンデッドに杖を構える。
体の修復は終了したのか、ハイアンデッドはよろけながらも剣を構えると、ゆっくりと後ろへ後ずさり玉座へと戻ると……倒れていた騎士に刺さっている、もう一本の剣を引き抜く。
二刀流……これが本来のあの王の戦闘スタイルのようだ。
再度俺はステータス画面を確認するが……ガッツというスキルなんて表示はされていない。
「見落としじゃないな……やっぱり、ガッツなんてスキルこいつは保有してないぞ?」
「しかし、確かにステータスはスキルの発動を検知しました……スキル隠匿の魔法でしょうか……しかしそうなればもっと分かりやすくステータス表示に妨害が起きるはず……」
ミユキは考える様な素振りを見せるが。
「AAA!」
「どうやら悩んでる時間は与えてくれそうにねーみたいだぞ!」
アンデッドは剣を構え、再度こちらに突進をしてくる。
「ちっ!?」
エリシアの魔法はまだとけてはおらず、敵のステータス欄も未だに黄色いままであるため、俺は剣を構えなおし、突進してくるアンデッドを迎撃する。
振りかぶるのは、引き抜いた方の剣。
「エリシア! 下がってろ!」
「う、うん!」
俺はエリシアを下がらせると同時に、振るわれた刃に自らの刃を重ねる。
筋力ではこちらが上回っている。
剣の持ち方も両手ではなく片手持ちになっているため、威力も弱いはず。
ならば、全霊で打ち合えば、必ず剣を弾き飛ばすことができると踏んだからだ。
「おおおおらあぁ!」
大きく態勢を崩せば、スキルグラップルにより相手を丸裸にできる。
そうなればいかに二刀流の使い手だとは言え、恐ろしくはないはずだ。
そのため、俺は怒声を上げながら両手で思い切り剣を振りぬく。
予想は的中。
剣は大きく弾かれ、アンデッドはそのわき腹を大きくさらけ出し隙を作る。
―――――――今ッ!
左手を伸ばし、相手の腹部を殴りつけてスキルグラップルを発動する……そうすれば、ガッツもろともスキルを奪い取ったうえでとどめを刺すことができる……。
俺は勝利を確信し、俺の指は腹部へとあと数センチと迫る。
だが。
【――――――――――――――――!!】
何かが爆ぜる音と共に衝撃が走り、視界がぐるぐると回る。
「!っっっ――――!」
何かにぶつかる痛み……そして続いて訪れる何かが焼ける様な匂いと、ありえないほどの熱量が全身を襲った。
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