第17話 興味を持ってくれる友達
「しかし、難易度調整おかしくないか? この世界」
ドラゴンに襲われてからまだ二時間くらいしかたっていないというのに、先ほどから自分よりもレベルの高いものに襲われすぎじゃないだろうか。
何が危険も即死もないだ神様……さっきからそれにしかぶち当たってないんですけど。
そんな不平不満を心の中の中二病(らしい)神様に対して漏らしていると。
「……はぁ……ありがとうリューキ……また、助けられちゃったわね」
深いため息をついたのち、エリシアが一人そうつぶやく。
その表情は先ほどの怒りは消えている反面……。
どこか落ち込んでいるようだ。
「無理もないですよ……ダンジョンに挑もうとした矢先の裏切りですから」
ミユキの言葉はもっともだ……国を抜け出して決死の想いでここまで来たというのにこの裏切りだ……当然その落胆がないわけがない。
「大丈夫か?」
「まぁね……」
「本当に?」
「……ごめん、嘘ついた。 正直辛いわ……この程度で落ち込んでる場合じゃないのは分かってるけど、やっぱ出鼻くじかれるときっついわ」
ボロボロのベンチに腰を下ろし、エリシアはもう一度ため息を漏らす。
「……まぁ、その気持ちはわかるな。 ゲームのチュートリアル中にバグで裏世界飛ばされて、またオープニングムービー見なきゃいけなくなった時と感覚が似てる。 なぁミユキ」
「そうですね! 足滑らせてチュートリアルで落下死しちゃった時とかも同じですよ!」
「そうそう、しかもさりげなくクイックセーブとか用意されてると、なんか製作者に憐れまれてるみたいで助かるんだけど余計に悲しくなるよな」
「……チュートリアル? オープニング? なぁにそれ?」
「なに、違う世界を救った時の話さ」
「転生者は忙しいのね」
なにせ一月に一回は世界を救ってたからな……ものによっては滅ぼしてたけど。
「あぁ、何回も死んで、即死トラップに理不尽な配置の強敵、孔明の罠にいしのなか。挙げ連ねればきりがないし、出鼻をくじかれることなんて何度もあったよ」
「リューキ様ゲーム好きですが苦手そうですもんね」
「ほっとけ」
「ふふふ、よくわからないけど、なんだか楽しそうね」
「あぁ、世界を救うってのは形は違えど楽しいもんさ。前にさえ進んでいればいいからな」
「……前だけ?」
「救世主(ゲームキャラ)ってのは前にしか進まない。真っ直ぐにな。 つらい過去があっても後悔をしていても、結局最後は前に進んで、そしてゴールにたどり着く」
「そのゴールが東京タワーだったりはしますけど」
「おいやめろ」
「ちょっと何言ってるのかさっぱりわからないけれども……とりあえずは前に進み続ければ何とかなるって言いたいのね?」
「まぁそういう事だ」
「つまりは、もしかして励ましてくれてたってこと?」
「……さあな」
「そんなわけないじゃないですかエリシアさん! 落ち込んでいる女性にゲームのたとえ話する時点で色々と片腹大激痛だというのに、話の分からない相手にノリと勢いだけで一方的に趣味の話を押し付けるなんてコミュ障を絵にかいたようなもんじゃないですか! これで励ましになると思っているなら救いようがないですよ! これはあくまで体験を語っているだけ! そうですよね! リューキ様」
「そうだな……涙出てきた」
「そう、それなら気にしなくてもいいわね。 実際何言ってるかぜんっぜんわかんないし……でも不思議ね、もっと聞いてたくなるわ。その不思議な話を理解して一緒にお話しできるようになれたらきっと楽しいんだろうなって……思えてくるの」
その発言に、俺とミユキは凍り付く。
今この少女は、俺のゲームの話に対し、呆れるでも嫌悪するでもなく……もっと話を聞いてみたい、知りたいといったのだ……。
その言葉を……俺はどれだけ夢見たのだろうか……。
ツンデレ、ヤンデレ、クーデレ、バブみ……。
色々な女性を愛し、指先一つで心を奪ってきた。
だが……どんな女性を落としても……どんなゲームをしていたとしても、埋まらない空虚感がそこにはあった……。
その理由が分からないまま、毎日を過ごし……ほぼワンクールごとに……まるでファッションのように嫁を作りだしては……忘れていった。
だが、今俺が感じたものは、その答えなのだろう。
この空虚感の答え……そして、今の言葉に感じた高揚こそ、俺が求めていたもの。
俺はきっと……俺の話を聞いてくれる女の子が欲しかったのだ……。
「大変ですリューキ様! この人天使です!」
「え? エルフだけど」
「勝ったぞミユキ! 俺たちのゴールだ!」
「まだダンジョン探索始まってもいないんですけど!」
慰めようとした彼女に、人生のゴールへと導かれてしまった件。
それにこの、全く話についていけてないのに頑張ってついて来ようとする感じがたまらない……。
「これは素晴らしいですよ……私たちはとんでもないものをエリシアさんに奪われてしまったようです!」
「そうだな」
「ちょ、ちょっと何よ!? 私、人の物盗ったりなんてしてないわよ! ど、ドラゴンの鱗だってちょろまかしたりなんかしないからね!」
「そんなものじゃない、もっととんでもないものを奪われたよ」
「な、なによそれ!」
「「私の心です!」」
「あれ? もしかして私からかわれてる?」
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