第15話 ぬるぽ
「!!?」
「!!!なっ……」
名前を確認した結果は黄色。 サヤ自信が敵対しているうえに、路地裏の物陰 に、敵対している兵士二人がいることが障害物越しに赤く光って表示がされた。
勿論、カギとやらを預けたなんて話は嘘八百だが、何とかうまくことが運んだから結果オーライでありひとまず胸をなでおろすが、これからである。
「なっ……えっ……サヤ、貴方」
「……あらあらまぁ、エリシアはんは正直者やさかい……だましやすかったんやけどねぇ……随分と賢いお兄さんがいてもうて……うち、困っちゃいますなぁ」
にやりと口元を緩めるサヤ。
当然悪びれる様子も慌てる様子もない。
その口元からは犬歯が覗いており、ぞっとするような殺気が向けられる。
ドラゴンの押しつぶされそうなそれとは違う、まるで毒のような甘ったるい……そんな殺気だ。
「あいにく、こっちの育ちのいいお人よしエルフと違って大人は信用しないからな! サンタクロースが自分の母親だったと知らされた高校の冬からすべての大人は俺の敵だ!」
「悪かったわねお人好しで! アンタも同類でしょうが」
「というかそんな年まで信じてたんですかリューキ様!?」
エリシアはすでにトネリコの杖を持ち臨戦態勢を敷いており、魔法の準備を始めている。
「それにしても、よくも裏切ってくれたわねサヤ……焼き狐にしてやるから覚悟しなさい」
「何おかしなこと言うてらっしゃるのんエリシアはん……狐は人を化かすのが仕事よ? それに、お連れさんの言う通り、大人しくしてた方がええんとちゃう?」
「エルフ族の魔法を甘く見てるなら関心はしないわね……一瞬で握りつぶせるわよ?」
「ほんならやってみ? ぎょーさん人が集まってはんなり掴まってまうよ? エリシアはん自分が不法入国者だって忘れてるのん?」
にやりと笑うサヤの言葉に、エリシアは困惑するような表情を見せる。
確かに、あんな巨大な腕を市街地に出そうものなら、目立つどころかテロリスト扱いされかねない。
ただでさえエリシアと俺は密入国者なのだから。
「……魔力で威嚇しても、魔法は使えん。 そしたら、武器すら持っていないナイトはんに何ができるのん? どう? 今ならわんわん泣いて命乞いでもしたら慈悲深いうちなら命だけは堪忍しするかもしれへんよ?」
もはや隠れる意味もないと判断してか、物陰からフルプレート姿の大男が二人顔を出し、片方は剣を片方はハンマーをずるずると引きずりながら、サヤの後ろに立つ。
ステータス画面は真っ赤っか。
サヤの言葉に、エリシアは一歩後退することで肯定をし、同時に俺に視線を向ける。
「ぐっ……ちょっとリューキ! 言われてるわよ! 何か言うことないの!?」
「すいません調子乗りました許してください!」
「素直か!?」
そう突っ込みを入れるエリシアであるが、仕方がないだろう。
何故なら目前の騎士二人のステータスは赤。
つまりは俺よりもはるかに強いということである。
レベル1の俺に対し相手のレベルは4.
幾らスキルグラップルがあるからとはいえ、触れるよりも先に剣で切られればそれで終わりなのだ。
「どうやら、手詰まりみたいねぇ……ほんなら、ちーっとばかし眠っとってね?」
サヤはそういうと、顎で騎士たちに命令を下すと、騎士たちは俺たちを捕らえるために剣を収めて迫る。
「ミユキ………できるか?」
俺は隣で慌てているミユキに小さな声で指示を出すと、ミユキは少し驚いたような顔を見せるが
「⁉︎ わ、わかりました‼︎」
とだけ言って一人上空へと飛んで行った。
「あらあら、お連れの妖精ちゃんは逃げはったみたいやねぇ。可哀想やねぇ?」
「へへへ……まぁ、この状況なら仕方ねえよ。見ての通りほら、お手上げだ」
「ちょっ⁉︎ リューキ何簡単に諦めてんのよ⁉︎」
エリシアは叱るように俺にそう声を荒げるが仕方ないだろう。
まともにやり合えばあちらに分があり、スキルも何もない俺に到底太刀打ちは出来るわけがない。
だからこそ。
「……ぬるぽ」
俺みたいな人間は、わざわざ触れるための策を練らなければならないのだ。
「がっ!です!」
合図と同時に、ミユキは騎士の頭上目がけ、頭頂部にタックルをする。
【スキルグラップル!!】
同時に俺はミユキを通じてスキルグラップルを発動し、剣士のスキルを掌握したのであった。
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