第8話 シャナという天使
村の中に入って早々、吐きそうになった。
なんとか呑み込んだが、しかし動揺を隠せたかどうかは分からない。
ただ、幸い二人や他の村人達は俺の事を見ていなかったようで、だから九死に一生を得た感じだった。
濃密な魔力が漂っている。
というより、一か所からそれが溢れ出ていて、それがこちらまで漂ってきているって感じだ。
その魔力は視線の向こう、村の中でも特に大きい石造りの家を中心に発生しているように見える。
これは、一体……?
「もしかして、先生。気づきましたか?」
「あ、え?」
「魔力の事です。多分その顔から察するに、感じ取っていますよね」
「……それは、まあ」
「あの場所に、シャナがいます。より正確に言うのならば、彼女がその魔力の発生源なのです」
その子、シャナという天使族の子は魔力の流れに異常があるという話で俺はこの場所にやってきた筈なのだが。
一体全体、それがどうしてこんな魔力を発生する事になっているんだ?
「兎に角、見て貰った方が早いと思います――ついてきてください」
俺達は、というよりステラさんはどうやら場所が分かっているようでリルルさんの隣を歩いている。
そして俺は目的の場所が何となく分かったので、二人に付いて行く事なく、ただ誘蛾灯に惹かれる虫のように魔力の元へと歩いていく。
流石にその過程でこの魔力には慣れたが、それでもやはり魔力のプールに浸かっているようで気持ちが悪い。
これ、彼女が治るまでずっと味わってないといけないのだろうか?
……そうこうしている内に俺達は目的の場所、つまりリルルさんの家へと辿り着く。
玄関の扉を開けると、すぐに家の人間らしき女性が現れる。
とても若いように見えるが、しかし天使族なので見た目通りの年齢ではないだろう。
「おかえりリルル。それといらっしゃいませ先生、とステラさん――兎に角、話は中に入ってからしましょうか」
「……その前に、まずはシャナさんの状態を確認させて貰っても?」
「分かりました、そうですね。では、ついてきてください」
俺の提案に頷いてくれた女性――恐らくリルルさんやシャナさんの母親かと思われる――は、俺達に背を向け、家の中へと入っていく。
俺達はそれについていき、そして一つの部屋へと辿り着く。
間違いない、ここが魔力の源だ。
一体、どうなっているのだろう?
俺はごくりと唾を飲み、そして開かれる扉の向こう側を、見た。
「……?」
そこにあったのは――キラキラと輝く結晶だった。
いや、違う。
女の子の身体から結晶が生えているんだ。
リルルさんよりも白色に近い髪色の少女。
彼女が――シャナさんだろうか?
俺はひとまず彼女の状態を確認すべく、ステータス開示を行った。
『ステータス異常【呪い 結晶付与】』
「……」
そこで判明したのは、先にリルルさんから聞いた情報とはだいぶ違った内容だった。
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