第3話 聖騎士は卑劣なマッサージなんかに負けたりしない!
怪しい店があるという話を聞いた。
最近、騎士団に所属している騎士達からよくその噂を聞く。
何でも肩こり筋肉痛、重心のずれなどいろいろな肉体の悩みを解決してくれるらしい。
しかも、魔術的な施術を一切行わずに。
その上かなり良心的な価格だと言う。
怪しい、怪し過ぎる。
しかし私が怪しむぐらいなのだから他の人間だって怪しむ筈だ。
だが、それでも今のところ経営は行われているみたいなのでやはり問題は見つからなかった、という事だろうか。
それにしたって、怪しい。
とはいえずっと悩んでも答えが出てくるはずもなく、だから自分の足でその答えを探しに行く事にした。
同僚にその話をすると、「すーちゃん、おっぱいデカいもんねー」と言われた。
五月蠅い、同性とはいえセクハラですよ。
この無駄にデカい胸の所為で肩が凝るのは分かっているんです……
誰かに渡す事って出来ないでしょうか……?
そんなこんなで今日は潜入の日。
出来るだけラフな格好で、しかし下手な手を出されるのも嫌なので最終的に名前と聖騎士という役職は出すつもりでいる。
案の定、私の名前は聖騎士という役職とセットで知っていたらしく、名乗った時はかなり驚いた様子を見せてくれた。
そうして彼――アルトというらしい――は私を施術室へと連れて行く。
見た感じ普通の部屋だ。
唯一言える事と言えば、かなり清潔に保たれているくらいで、それもどちらかというと好意的な点であろう。
だが、逆に言うと清潔に保たねばならない何かを行っているとも言えるかもしれない。
やはり、怪しい。
……怪しいと思っているからこそ怪しく感じてしまうかもしれないのだが、そこはとりあえず置いておく事にする。
「それでは、早速初めて行きましょうか」
椅子の上に腰掛けるよう指示を出される。
……椅子の上に腰掛けるように指示を出されるッッッッ!!??
な、何をするつもりなのですかこの男は!
か、肩を揉むってどういう事ですかなんの隠語ですか!?
私をどのようにするつもりですかっ!
内心ドキドキしつつ、それを表に出さないようにしつつあくまでにこやかに微笑みながら私は椅子の上に腰掛ける。
落ち着きなさい、おちくつのです私。
私は聖騎士序列一位、ステラ・リリス。
こんな怪しげなマッサージ屋とかいう場所で行われる卑劣な技――マッサージなんかに屈する筈がないのですっ。
大体この男もひょろっとしていて頼りないし、そんな奴が出来る事なんてたかが知れています。
なぁに、大丈夫です私。
慢心はするべきではありませんがそれでも警戒し過ぎです安心するのです。
ほら、未だってただこの男の手が肩に置かれているだけで。
肩に手を置かれているッッッッ!!??
な、なななななっ!
いきなり破廉恥じゃないですかねこの男は!?
初対面の人間の肩に触れるとか万死に値するのではないですか!
い、いやいや落ち着くのですステラ・リリス。
最初に言っていたではないですか、肩を揉むと。
だからこの程度のボディタッチは普通です。
それより問題は、これよりどのような肩もみが行われるのかです。
ふぅ……
さ、さあ。
掛かって来なさい卑劣な男めっ!
私、聖騎士序列一位のステラ・リリスが貴方の卑劣な技をこの身で耐えきってやりま――
ぐにゅ。
ほぅわっっっっ❤
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