第2話 ……視線を下に落とすのは止めよう
……兎に角、自分の役割を全うしなくてはならない。
俺はひとまず彼女、ステラさんを仕事場へと連れて行く事にする。
仕事場、というか施術室と言うべきか。
上等な布の敷物が敷かれているベッドを見、彼女は「なるほど」と眼を輝かせる。
「ここがその、マッサージ室なのですね」
「ええ、まあ。その通りですです、が……すみませんステラさん。お聞きしたいのですが、貴方は何故、このような場所に興味を持ったのでしょうか? 聖騎士という重大な役割を担う貴方のようなお方が、このような場所を知る事になるとは、到底思えないのですが」
結構本音で語っている。
実際、このマッサージ屋は「知る人ぞ知る」って感じの店だ。
おおよそ彼女のような表立って活躍するスーパーヒーローが知るような場所ではないと思っている。
ただ、彼女の格好を見るに多分この場所がどのような場所で、どのように思われているのかは大体把握しているようで、実際彼女は目立たない格好をしていて化粧もしていない。
それでもぱっと見美少女に見えるのだから凄い。
金髪碧眼の天使の如き容姿。
あるいは女神も嫉妬しそうなほどの美貌と言うべきか。
「ええ、実は私の抱えているちょっとした悩みを知る友人が、貴方の事を紹介してくれまして」
「友人?」
「ええ、クレアという女の子を、知っていますよね?」
「クレア――ああ、あの子ですか!」
最近酔っ払ってこの店に足を運んだ子である。
ていうかあの子、騎士団の関係者だったのか。
酔っ払って人の店に入って来るような人間が、聖騎士の友人で良いのだろうか?
……いや、見た目で人を判断してはいけないというし、案外凄腕の騎士だったりするのかもしれない。
「それで、悩みとは?」
「ええ、実はですね」
そしてステラさんはかなり深刻そうな表情で言う。
「……凄く、肩が凝るんです」
「……………………」
でしょうね、とは言えなかった。
そりゃあそんな重たそうなものを引っ提げてたら肩も凝るでしょ、とも言えなかった。
とはいえ無反応もおかしいので、「なるほど」と神妙に頷いてみる事にした。
「何故かその、私、肩が凝るんですよ。それをみんなに相談しても、全然話を聞いてくれなくて。話が合う友人もいるにはいるんですけど、その人もどうして肩が凝るのかについてはまるで説明してくれなくて」
「はぁ……」
いや、ホントに?
それだけ重たいものを持ってれば気づきそうだけど?
「ですので、アルトさん。今回は私の肩こりを直していただきたくて、この場所に足を運ばせていただきました」
「分かり、ました」
俺は頷く。
とはいえ、ここで重度な疾患を抱えていたりとかしたら俺も本気で頭を抱えていたかもしれないが、一応彼女の悩みは肩こりである。
それなら、普通に筋肉を解して上げればそれで済むな。
そう思いながら彼女に「とりあえず、椅子に腰かけてください」と言う。
「施術自体はすぐに終わると思いますので、リラックスしていてくださいね?」
「あ――はい」
ごくり、と唾を飲んだ彼女は素直に椅子に座ってくれる。
さて、と俺は手と指をぐりぐり動かしながら彼女の後ろに回る。
凄い、後ろからもおっぱいが見えるぞどんだけでかいんだ。
……煩悩を殺し、さっさと彼女の硬く凝り固まった筋肉を解してやろう。
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