異世界でマッサージ屋を始めたけど、リピーターの肩こりの原因がどう考えてもおっぱいです

カラスバ

第1話 原因が一目瞭然

 この世界に転生してから3年の月日が経過した。


 30歳、トラックに轢かれるとか死を経験した訳ではなく、唐突に気づいたらこの世界に来ていた。

 いわゆるチェンジリングとか神隠しとか、そう言った類だろうか?

 兎に角、俺は気づけばこの異世界の土地に立っていて、若い身体を得ていた。

 

 この若い身体には特殊な能力があった。

 その能力を俺は「ステータス開示」と勝手に名付けていて、その名前の通り念じる事で自他の能力を知る事が出来る。

 例えば現在の俺の能力を確認すると――「空腹」というステータス異常を確認する事が出来る。

 実際、現在12時過ぎでまだ昼食を食べていないので、「空腹」状態というのは間違っていない。

 早くご飯食べないとな。


 そして、この能力を生かして俺は――マッサージ師をやっている。

 お金を貰い、筋肉を解し整える。

 骨の位置を治したりもする。

 元々の世界でマッサージ師をやっていたからこそこの職業を始めようと思った訳だが、最初はやはり全然見向きもされなかった。

 ただ、冒険者ギルドで明らかに体調の悪そうなおっさんがいて、その人に試しにマッサージをさせてもらったところ、結果的に凄い宣伝効果を得る事になった。

 何でもその人、元A級ランクの冒険者だったらしく、最近は身体の不調で止めようと思っていたらしい。

 ただ、俺のマッサージを受ける事で体調不良がすべて治った。

 それで今ではバリバリの現役冒険者として活躍しているらしい事を、良く俺に話してくれている。


「あんたのお陰だよ、アルト。あんたのお陰で俺はまだまだ戦える」


 彼が宣伝してくれたお陰で、結構な人が俺のマッサージ屋を訪れてくれる。

 そして今のところ好評みたいなので俺も嬉しい。

 実際、この世界の住人は無理に身体を動かす人が多いみたいで、だからそれで身体を壊してしまう人が結構いる。

 なのでマッサージ屋の仕事がなくなる事はなく、そして感謝される事も多い。

 例によって「ありがとう、これでまたバリバリ戦える」と言われるのだ。


 唯一困っているのは、女性への対応だ。

 現状マッサージを行えるのが俺しかいないので、女性へのマッサージはとりあえず魔術契約を最初に行うようにしている。

 魔術契約で俺の強引なセクハラなどを出来ないようにする訳だ。

 ただ、それでも結構身体を触る事になるのだが、結果的に身体を解して体調が改善されるので、セクハラで訴えられた事はない。

 中には施術中に使ったオイルを買いたいと言ってくる人もいるくらい。

 ただまあ、このオイルは独自で開発したものなので販売は行っていない。


 と、言う訳で俺はこの世界でマッサージ屋として結構上手くやっているのだ。

 今日も今日とて自宅兼仕事場の一軒家の扉の脇に「OPEN」の板を立て掛ける。

 それで準備は終わり。

 あとは人が来るのを待つ訳、だが。

 

 ……そう思っていると、扉が開かれる音がする。

 

「いらっしゃ――」


 とんでもない巨乳の美少女が扉の前に立っていた。


「その、ここがアルトさんのマッサージ屋であっていますか?」

「……あ、はい」


 あまりの衝撃に思わず脳みそが一瞬やられた。

 すぐに慌てて会釈をすると、彼女は安堵したように「良かった」と口にする。


「こう言っては何ですけど、思ったよりも普通の店構えだったので、入るのに躊躇しちゃいました」

「派手な装飾品は不要だと思っていますので――それでその、貴方が例の予約した方であっていますか?」

「ええ、はい。今日はよろしくお願いします」

「……はい、こちらこそ」


 そう言いつつ、俺はさりげなく「ステータス開示」を発動。

 一体、どういった理由でここを訪れたのだろう。

 彼女みたいに若い女の子が俺の施術を受けたいとは思わない気がするんだけど。

 もしかして、ガサ入れか?

 いやでも危ない事はしていない筈――


『ステータス異常 【おっぱい過多】』


 ………………おっぱい過多ってなんぞ?


 いやまあ、確かに彼女のおっぱいは、下手すれば彼女の顔よりも大きい気がするけどさぁ。


 彼女は少し困ったように言う。


「その、恥ずかしながら私、肩こりに悩まされる事が多くて。それで先生の施術を受けられたらなと、そう思いまして」

「はあ……」


 なる、ほど。

 ……そりゃあ、そんなおっぱいしてれば肩も凝るでしょうよ。

 しかしそんな事を言ったら間違いなくセクハラなので、俺は曖昧に頷く事しか出来ないのだった。


「そう言えば、お名前は」

「あっ! そう言えばまだ自己紹介がまだでしたね」


 彼女はやってしまったという表情をして、それから改めて「私の名前は」と自己紹介をして来る。


「私の名前は、ステラ・リリス。一応これでも聖騎士をやらせていただいてます」

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