ひとり

「ねぇ、サユリ! 聞いて聞いて〜!」


「何よ相変わらず騒々しいわね」


「凄いの! もう、こんなことあるの⁉︎ って感じなのよ!」


「まぁ、どうせそう大したことじゃないんでしょうけど、どうしたの?」


「それが、クラスで隣の席の子のお父さんがウチのお父さんと同じ会社で、しかも職場で席が隣だったんだよ〜! これってヤバくない!」


「へぇ〜、田舎ならともかく、これだけ学校が多い都会で子供と親が偶然席が隣になるのは珍しいわね。小学校とかなら分からなくもないけど」


「え? どうして?」


「親が同じ職場で歳も近ければ収入も近いし、同じ通勤圏に住む確率も増えるでしょ? 子供の学区が重なっても珍しくないわよ。ただ、受験で公立・私立どこでも行ける都会の高校でも一緒になるなんてのはレアだと思うわ」


「でしょ〜! 事実は小説より奇なり、だよ!」


「詩人パイロンの言葉ね。ちなみにマーク・トウェインの『真実は小説より奇なり』という言葉もあるわ」


「あ! マーク・トウェインは聞いたことあるかも! 確か『トム・ソーヤ』を書いたアメリカの作家だよね?」


「そうよ。他にも人生には大事な日が二日ある。という言葉を残したわ」


「相変わらず物知りだね〜。それで何の日と何の日が大事なの?」


「自分が生まれた日と、なぜ自分が生まれたのかを分かった日だそうよ」


「おぉ! 格好いい!」


「ちなみに私は対抗して、人生には大事な人が二人いる。という言葉を残すことにするわ」


「んむむ、そのココロは?」


「一人はもちろん自分で、もう一人は自分がなぜ生まれたのかを分からせてくれた人、アンタよ」


「キャーー‼︎ サユリー! 私には大事な日が三日あるよ〜!」


「あら? そのココロは?」


「生まれた日と、何で生まれたのか分かった日と、分からせてくれたサユリが生まれてきてくれた日だよ〜!」


「……気持ちは嬉しいけど、私とアンタって同じ誕生日じゃなかったっけ? 確か仲良くなったきっかけそれだったでしょ?」


「そう! 真実はいつもひとつ! だよ、サユリ〜!」


「どっかで聞いたような台詞だけど、あながち言い得て妙なとこが癪に触るわね」

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