第10話 Happy christmas(10)

ちょっと不器用なヨレヨレな



『Happy Chrismas!』



の文字も書かれていて



「昨日。 その結婚する友達の家に行ったらね。  新婚さんなのにごめんねって。 旦那さんにクッキー作ってあげようって言ってくれて。 教えてもらいながらやってたの。 そしたら時間がかかっちゃって。」



夏希は少し恥ずかしそうに言った。





それで



あんな時間まで…



高宮は理由もきかずに彼女を怒ってしまったことを



ものすごく反省した。



「この字はね、昨日帰ってきてからやったから。 なんかグネグネになっちゃった、」



ゆうべ、ベッドに寝た形跡がなかったのは



夜通しこの作業をしていたからのようだった。



「あたし、お菓子とかって作ったことなくて。 どーかなあ。 友達に教えてもらいながらだったからだいじょぶだと思うんだけどー、」



夏希は自分の料理の腕に自信なさげだった。



「なんか。 もったいなくて・・食べられないよ。」



胸もいっぱいだった。



「しょせんお菓子だから。 食べてくれた方がうれしいよ。 ね、二人で食べよう。」



夏希はパーっと明るい顔になった。



高宮はそのままはじっこにかぶりついた。



「ん????」



一回で噛みきれなかった。




今度は思いっきり歯の端で噛んでみたら



何とか割れた。



「かっ・・固っ・・!!!」



歯も折れそうだった。



「え! ほんと? 固い??」



夏希は身を乗り出した。



「・・かた焼きせんべいより固い、」



何とか口に入れた分は飲み込んだ。




「え~? どういうことー?」



「こっちが聞きたいよ・・」



夏希もそのクッキーにかぶりついた。




そして




「・・固っ!」



やっぱりその固さに顔をしかめた。



「な?」



「え~~~? 言われた通りに作ったのにー。 持って帰る時に壊れないように固めにって友達に言ってレシピ見てもらったからかなァ、」



「にしても。 固すぎ・・」



もうおかしくて笑いがこみあげてきた。


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