第3話 Happy christmas(3)
「ご、ごめん! ごめんね。 あたし友達に断るから、」
夏希は慌てて言った。
しかし
「・・いいよ、別に。 行ってくれば。 楽しみにしてたんだろ、」
高宮は思いっきり不機嫌になって、素早くゴハンを食べてさっさと片付け始めてしまった。
夏希は高宮のこの
『いいよ別に』
という物言いが
全然
『別に』
じゃないことにさすがに気づいていた。
どーしよ。
隆ちゃん怒っちゃった・・。
非常に気まずい空気になってしまい
どっと落ち込んだ。
「はあ? プロポーズ記念日???」
南は食べていたチーズケーキが思わず口からこぼれそうになった。
仕事の帰り、南と夏希は萌香に誘われて自宅で夕食をごちそうになった。
「もうやっちゃったかなーって感じで。 隆ちゃんカンペキに怒っちゃって・・」
夏希はまだ落ち込んでいた。
「はー。 ナニソレ。 うざっ、」
南に笑い飛ばされてしまった。
「ウザいだなんて言ったらかわいそうですよ、」
萌香はちょっと高宮に同情した。
「だってさー。 結婚記念日とか誕生日ならわかるよ? でも、『プロポーズ記念日』って、」
南は夏希と同じように
記念日にはまるで無頓着なようであった。
「隆ちゃん、ほんとそういうのちゃんと覚えてるってゆーか。 もちろんあたしだって忘れちゃったわけじゃないけど、そういうのも二人の記念日なんだーって。 その時初めて気づいて、」
夏希はしょんぼりしてコーヒーにミルクを入れてスプーンでぐるぐるとかき回した。
「それに。 クリスマスってやっぱ結婚しても二人で過ごすモンなんですかあ? あたし、ほんっとなんも考えてなかった、」
それに何も感じなかった自分にも
世間とのズレがあるのではないかとゆうべから悩んでいた。
「え~? ウチは別にそんなことないよ。 だいたい仕事も忙しい時期やし、まあちょっと高いシャンパンとか買って来て乾杯くらいはあったりするけど、それだって改まってするわけでもないし。 萌ちゃんトコは?」
南は萌香に振った。
「ウチも、特には。 結婚する前から・・特別に何かってのはないですけど。」
「斯波ちゃんもそういうの無頓着そうやしなあ、」
南はおかしそうに笑った。
「でも。 やっぱ無神経だったかなーって。 友達との約束も結婚したらちゃんと隆ちゃんに訊いてから返事しないとなーって・・」
夏希は少しだけ反省した。
「そんなこと! あたしは別に事後報告でええと思うよ。 だって加瀬には加瀬の世界があるやん。 クリスマスの重要性がな、二人おんなじってわけでもないし。 せっかく友達が結婚するって久しぶりに集まるんやろ? そっち優先でええやん。 高宮とは毎日会ってるんやで?」
南は言葉に力を込めた。
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