第2話

君と出会ったのは春。

車椅子で移動する私はたくさんの人の視線集めて、皆より少し目立ってた。

車椅子って珍しいから目立つのも分かるし気になるのも分かってたからあまり考えないようにしてたけど、その場になるとやっぱり萎縮しちゃうもので。

先生に押されながら着いたのは体育館。

皆綺麗に整列している中、なるべく音を立てないように入れてもらった。

いつの間にか年が変わり二年生になった皆は眩しくて羨ましくて見ていられなかった。

だって私は留年しちゃったから。


急に動かなくなった腕。原因が分からず色んな病院をたらい回しされて分かった病気は難病指定だった。

今は手足が動かず一人では何もすることが出来ない。

そして病気が進行していけば心臓の働きが低下し血液が全身に送れなくなる。

私は頭が真っ白になって、ふと楽しかった私の人生はこうも簡単に終わるのかと思った。


一人では何も出来ない私が何故こんな所にいるかと言うと、単純に思い出作りだ。

自分の体は自分が一番が分かっているというのは本当で、なんとなくもう長くは居られないと悟っていたから。それなら泣きわめいて終わる一日も、笑って過ごす一日も同じ一日なら、笑って過ごしたいと思ったから。怖くて眠れない夜が続くより、明日があると思って生きた方が幸せじゃないかと思ったから。だから私は普通の日々を過ごすことを選んだ。当たり前に明日がある皆と過ごせば、きっと自分の気も紛れる。自分にも未来があると信じられる。でも現実は難しくて。車椅子の私は浮いてしまうし、一年間病院に通い続けた私には友達が居なかった。思い出作りも何も一人では何も出来ないのに周りに近づく人も居なかった。こんな状態で教室に上がれるわけもなく、私は特別教室で数時間過ごしては病院に帰る生活を送ることになった。

「じゃあそろそろ教室に行こうか」

そう付き添ってくれた中田先生に声をかけられ今集会が終わったことに気がついた。私は返事をして出口が混み合う前に先に体育館から出して貰った。

「先生資料取りに職員室に行くから教室で少し待っててね」

と私の車椅子を押しながら先生は言った。私が行くことになった特別教室は不登校の子や友達と上手く馴染めない子達が来ていると教えて貰った。だけどほとんど朝の決まった時間に学校に来ることは無いから合わないかもねとも教えてくれた。連れられて入った教室は本棚にびっしり本が入っていた。隅にある一台のパソコンには高そうなヘッドフォン。英語で使うようなヘッドマイク付きのもので無いことに違和感を感じたけれどもしかしたら先生の私物だったりするのだろうか。ほとんど使うことが無いのだろうホワイトボードはペンの跡も少なく綺麗だった。隅に『始業式体育館』とだけ書かれた文字があった。きっと中田先生の字なんだろう。中田先生はこの教室の先生だ。といっても出席日数を稼ぎに来ているような彼らが先生に勉強について尋ねることはほとんど無いそう。それでも答えられるように色んな勉強をしているのは本棚の参考書や机の上にあるノートを見れば理解できた。凄く生徒思いの先生と一年間一緒に過ごせることに少し嬉しくなった。先生はまず勉強よりたくさんお話しして仲良くなろう。と先生らしからぬ事を言う先生だった。紅茶が好きで是非私にも良さを知って欲しいと。学校で作る思い出とは違うかもしれないけれど私にしか出来ない思い出のような気がして少し前を向けた事を思い出した。そんな事を考えていると教室のドアが開いた。先生が戻ってきたのかと振り返れば

「え、だれ?」

そう言い放つ君が立っていた。

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終わったことだから、聞いて欲しい。 柊羽 @syuuha

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