第3話 作戦会議
「それじゃあ早速本題に入りましょうか」
天王寺はそう言うとスクリーンの電源を入れた。数枚のスライドを見せながら説明を続ける。
「今回の東京調査、目的はこのアマテラスの食糧問題を解決することです」
「食糧問題解決って汚染した都市の食料庫でもあさりに行くつもり?」
呆れたようにカレンが言った。
「そんな野暮なことはしませんよ」
「じゃあ、どうやって」
秀斗が尋ねる。
「我々政府はアマテラスに避難するより以前、ロックダウンの徹底のために東京全域に生体センサーを設置していたんですよ。アマテラスができてから10年近くなーんの音沙汰もなかったんですがね、ちょくちょく反応するようになって、最近はもう頻繁に反応しているんですよ、気になりません?」
「どうせネズミか何かの小動物だろ」
桝田が言った。
「ネズミごときでしょっちゅう反応しますかね〜。仮にネズミだとしてアマテラスの外に動物なんて信じられます?まして東京はS級汚染地域ですからねぇ」
「つまるところ我々の目的は東京都の調査並びにその生態の捕獲というわけです」
海老沼が言った。
「そそ、そういうことです。ちなみにぜーったいに生け捕りにしてくださいよ、もし間違えて殺したりしたらその人はアマテラスから締め出しますからね」
ハハ、と天王寺が笑っている。先程からの情報量とあまりの温度差に調査員たちは釈然としないといった様子だ。
「結局食糧不足にどうつながるんだ」
ようやく東海林が口を開く。
「いい質問ですね東海林さん、答えはズバリ、生体実験です!あれだけの環境下で生きられるのには体内に何らかの抗体があるに違いないですからね」
笑顔を崩さず淡々と語る天王寺からは不気味さまでも感じられる。
「あの、食糧問題ならもう一回アマテラスみたいなガラスドームを農業地用に作るんじゃだめなんですか?」
「それも大変良い質問です、秀斗くん、無難な案なので我々も検討していたのですが、アマテラス内からの遠隔工事ですし農業用地ということもありましてね、汚染地帯の消毒やらなんやら諸々、AIに試算させたところ最短で20年弱かかっちゃうんですよ〜、その頃我々はと言うと、食料尽きてみんな餓死しちゃってます」
天王寺は手を叩いて笑ってみせた。秀斗は顔を引きつらせて苦笑いした。
「あー面白い、すみません一人で笑っちゃって、まあ要するに確率的にも調査に言ったほうがいいという結論に至ったわけです」
こうして一般選抜調査員4名は東京調査の目的の説明を受けた。こうしている間にも食糧問題は深刻さを増していっている。猶予が残されていない。出発は3日後の7月5日の早朝と決まった。
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