二、標的探しとその結果
人里に降りた恒司は、まず化かす人間を探した。
(さてと……どこに行くかね)
キツネ姿の恒司は、道行く人に目を光らせながら草むらを歩いた。
すると、向こうから若い娘が歩いてくるのを見つけた。しかも一人でいるではないか。これはチャンスだと思い、恒司は人間の男に化けた。背が高く二枚目な青年である。恒司はその容姿を利用して、娘の前に立ちふさがり話しかけた。
「もし、そこのお嬢さん。少しお時間ありますか?」
突然見知らぬ男性に声をかけられ、戸惑う女性。だがすぐに警戒心を解いたようで笑顔を見せた。
「はい。大丈夫ですよ」
「よかった。実は僕、あなたに一目惚れしてしまったんです。よろしかったらお茶でも飲みに行きませんか?」
「あら……。それは嬉しいのですが、私には婚約者がいますので……」
女性は申し訳なさそうにしている。しかし恒司はそれを無視して強引に連れ出そうとした。ところがその時だった。後ろから声をかけられたのだ。
「おい、お前!その人に何するつもりだ!!」
振り返るとそこに立っていたのは、一人の男であった。背丈はそれほど高くないが体格がよく、目つきが鋭い。おそらく用心棒とかそういった類だろう。
「ちっ……邪魔が入ったか……」
舌打ちをする恒司に対し、男はさらに怒鳴ってきた。
「貴様!!俺の女から離れろ!!!」
その
(くそっ……せっかく獲物を捕まえられると思ったんだがなぁ……)
心の中で
だが、なかなか標的は見つからなかった。大抵は二人以上で連れだって歩いていることが多く、一人きりというのはなかなかいないものだ。それでも諦めずに探し続けたが、結局見つからずじまいで夕方になってしまった。
「あーあ……今日は全然駄目だったなぁ……」
恒司は落胆して呟いた。そして、
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