第3話 今、何考えてる?

 ある日。伊圭男は席から立ち上がり、凡子の横に立った。


「何?」

「…………」


 いや、本当に喋らないな、この子。凡子はどうしようか迷っていると、普都男がどこからか湧いてきた。


「図書室? 連れて行ってやろうか?」


 伊圭男は小さく頷き、小さく「ありがとう」と言った。蚊の鳴くような声とは、まさにこのことだ。凡子は目の前で起こったことが全く理解できなかった。


「え? なんで図書室行きたいって分かったの?」

「ん? 本持ってんじゃん」


 確かに伊圭男は本を手にしていた。それだけで分かった普都男はエスパー使いか何かかと凡子は思った。


「よくわかったね」

「そんなの、普通だろ? 友達だし」


 伊圭男は真顔で立っていた。さすがの凡子でもそれは否定のサインだと分かった。


 それからというもの、ジェスチャーゲームにもならない「伊圭男の考えを当てようゲーム」が頻繁に発生した。

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