2章 逃げ

巨獣の侵入を報告するという『観測者』としての基本業務をまた一つこなし、青年は草葉の陰で横になる。


「はぁぁぁ~。前線からバックれたはいいけど、この仕事も楽じゃねぇ〜。ブラック度合いだったらこっちの方が上だぜ。」


不満をこぼしながら、青年は前職のことを思い返す。


このシュトゥルムフート王国の西部防衛ライン。

その最前線で日々、血みどろになりながら巨獣と戦っていた最悪の記憶。

ここのような後方では見ることの無いレベルの巨獣達との戦闘では、死傷者もおびただしい数になる。

余計な心労を背負うのも嫌だった青年は、極力他の兵士とも仲を深めず、なるべく関わらないようにしていた。

それでも目の前で人が死ぬのは慣れなかったので、より奥地に単独で拠点を置き、一人で戦うことにしたが、結局辛い環境に耐えきれずに離脱してしまったのだ。


「師匠に拾ってもらったはいいけど、結局あの化け物共と顔を合わせるのは変わらないし、休みはほぼ無いし、眠いし、持ち場汚いし、〜〜〜」


青年が今の仕事に対する愚痴を永遠に吐き捨てていると、手元に置いた無線機が鳴った。





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