1章 青年A

嫌な音がした気がする。

この数ヶ月で聞き慣れた、鈍い地響きのような唸り声。


「…早くも次が来たか…もうこの仕事も限界かな…」


前方遥か先、微かに立ち上る土煙を見て、青年はため息をついた。


「いやしかし、やっと見つけた寝床と収入を手放すのか?またあの生活に戻るのか?…絶対嫌だ!!!」


そう言って、青年は肩にかけていたバッグから双眼鏡と無線機を取り出した。


青年がブツブツと自問自答しているうちに、青年の悩みの種であり、仕事相手でもある《巨獣》が、双眼鏡でハッキリと姿を視認できるところまで近づいてきていた。

握っていた無線機に指を掛ける。


『…こちら二十三番。B地点で中級一体の侵入を確認。応答願います。…』


『…あ、あ、弐番隊りょうかーい。直ちに迎撃体勢に移りまーす。…』


無線機の向こうから、自分より幼い少年の気の抜けた声が返ってきた。




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