その観測者、見習いにつき

あおいろえのぐ

プロローグ 少女A

無我夢中で走っていると森を抜けた。

淡い西日が少女の頬を照らすと、流れていた汗がキラリと光った。


(…ここは一体どこなんだろう?)


手で汗を拭いながら辺りを見回す。

抜けたと思われた森もどうやら途切れ途切れになっているだけで、この先もずっと続いているようだった。


少女は深呼吸をして、乱れていた呼吸をゆっくり整えていく。

木々のざわめきと少女の息遣いのみが、辺りに響く。

その静けさが、少女を落ち着かせた。


(…お腹、空いたなぁ…。)


ふと見ると、向かいの大木の麓に見たこともないキノコが山ほど生えていた。

それを見た瞬間、少女はノータイムで動き出す。

とぼとぼと、やや重い足取りで、目標との距離を詰めていく。


少女は荒々しい手つきでキノコを引き抜くと、何の躊躇もなく口に投げ入れた。








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