Ep.10:夜の出来事
◇ 病室では ◇
穏やかな寝息を立てる
そろそろ、消灯時間になる。
消灯前の看護師さんの巡回はベットの下に隠れて上手く交わした。
幸い、ここのベットは古いタイプで下に入れる空間が空いていた。それに個室があてがわれているのでトイレも困ることはない。
お昼に買ったペットボトル飲料もまだ残ってる。
聞いた話によるとここの病院は二時間おきに巡回があるらしい。
消灯後、最初の巡回前にトイレに潜んだ。
忍足で
鎮痛剤の効果が切れているのだろうけど、時々、呼吸が詰まった様になっている。その様子を見るとたまらなく苦しくなる。それにあの時の事を思い出すと体が震えてくる。それでも
私にはこれくらいの事しか出来ないけれど、彼の手を握って、私達を助けてくれた感謝の想いと早く怪我が治って欲しいという想いを込めて願う。
嘘の告白と思われて付き合っている時には触れられなかった彼の手を握っている。それなのに、嬉しいという気持ちは浮かんでこなかった。ただただ、感謝と怪我の回復を願っていた。
その後、何度か巡回の時間はトイレに潜んでやり過ごした。
明け方が近くなった頃にあまりにも眠くなってベットの下に潜り込んで寝た。意外とそこまで見てないみたいでバレなかった。
朝の診察と朝食の為に人の出入りが増えた頃に目を覚ました。
完全に遅刻する時間。
病院関係者が病室から出て行った隙に、私がベットの下から出てくると
「
その想いを伝えるだけで
「僕も、もっと早く助けに入れたら良かったんだけど……」
「そんなことない。
「でも……」
それ以上、言わせないように
「私たちは助けてもらったの、だから、
それでも僕は考えてしまう。もっと早く僕が目を覚ましていればと。
だから心がもやもやしている。
「でも……」
「それ以上、言うならキスをします!」
顔を真っ赤にした
「……
ボソッと呟かれた彼女の言葉は聞き取れなかった。
「他のみんなも多分、一緒の事を言うと思うよ。
明るい感じで少しだけ茶化す。この話はこれでお終いと。
「もしかして、ずっとベットの下にいた?」
「ううん、明け方近くまでは起きてたけど、眠くなっちゃって……、まだ少し眠いかも」
関係のないことを話して過ごす。二人っきりでこんなに話したのはいつぶりだろうか?
◇
「
時刻は22時、
今、この部屋にいるのは
「
「中学の頃のアイツはどんな感じだったんだ?」
「う〜ん、何処にでもいる大人しい男子って感じなんだけど、今思うと同い年の男子とは違って周りをよく見てるっていうのかな?気遣いが上手っていうのかな?相手に気を遣わせる事なく接する事が上手なんだと思う。これで、他の男子みたいにとは言わないけど、もう少しだけ恋愛に積極的なら彼女になりたいって子、結構いたんだけどね」
「
「私は違うよ……、私は彼を利用したの。中学の頃、しつこく付き纏ってくる男子がいて助けて欲しくて彼に縋りついたの」
「どうして
「女子の間で割と有名だったんだけど、私みたいに付き纏われたり、他の学校の子と遊ぶときに偽の恋人役が欲しい時とか、彼が助けてくれるって話があったの。彼、髪を整えたらそんなに悪くないでしょ?他の男子に比べても変な目で女子を見ていなかったのも、みんなから評価が高かったんだよ」
「ふ〜ん」
「まあ、無害そうだと思っていたのは私らも一緒なんだけどな。でも、アイツの昔の事を聞いたらさ、なんか、無理してたんじゃないかって考えたんだよな。それで、私らが一緒にいたら嘘の告白してくる奴もいなくなると思ってたんだけど、逆に助けられちまったなあ……」
ふと、今日の事を思い出す。手が僅かに震える。
最初に
もう少し、
力では男子に抗えない事を今回思い知った。
「そろそろ寝ようか?」
「そうですね、じゃあ、電気消しますね」
「ああ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
帰ってきたら感謝の気持ちも込めて美味いもんを食べさせてやろう。
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病院の巡回については実際にはもっとしっかりしていると思いますが、演出の都合上、緩くしています。そうでないと
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